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愛媛の3R企業

“もったいない”を見つめ直して ~古材の再利用に積極的に取り組む~ 株式会社 ヴィンテージアイモク(2008年11月) 

2008.11.01 愛媛の3R企業

愛媛県資源循環優良モデル認定制度において優良循環型事業所に認定された企業を紹介する「愛媛の3R企業」。第4回は、これまで廃棄されていた古材の再利用(リユース)に積極的に取り組んでいる株式会社ヴィンテージアイモクをご紹介します。

株式会社ヴィンテージアイモク

会社概要

本 社〒791-8042
松山市南吉田町2821-4 Bizport A505
代表者 代表取締役社長 井上 幸一

 

日本の住宅の寿命は約30年

わが国における「滅失住宅の平均築後年数(※)」は約30年で、アメリカの約55年、イギリスの約77年と比較すると極端に短くなっています。このことは、多くの建設資材を消費しているだけでなく、建て替え時に大量の産業廃棄物を発生させているということです。廃棄される物の中には、まだまだ使える物も多くあります。例えば、60年前の古民家の柱や梁などに使われている材木は、少し手を加えれば100年は持つそうです。しかしながら、これらの古材を扱う流通ネットワークはなく、お金を払って処分しているのが実態です。
(※) 最近5年間に滅失した住宅の新築後経過年数の平均値

 

“もったいない”が原点

このような“もったいない”状況を見て、古材流通ビジネスを開始したのが、株式会社ヴィンテージアイモクです。井上幸一社長は「本来、古民家に使用されているような国産の木は、100年後に最も強くなる。その時期を待たずに捨ててしまうのはもったいない。このままでは山は無くなってしまう」と考え、自ら古材流通市場を構築しました。

 

古材流通の仕組み

2004年に開始した古材の仕入・販売を行う「古材倉庫」のFCグループは、100を超える建築業者や工務店などが集まるまでに成長しました。
 古材の流通システムは、図表のとおりです。

画像:古材の流通システム

古材の流通システム

古材倉庫グループでは、古材の仕入(買取)担当の「古材倉庫買います店」、古材の販売担当の「古材倉庫売ります店」、古材を使った建築を担当する「古材倉庫活かします店」、そして仕入れた古材の鑑定や価格設定システムを提供する「古材倉庫FC本部」と、明確に役割が分担されています。これらのFC企業がインターネットなどを通じて情報を共有し、古材の流通を進めています。

画像:古材の取り出し風景

古材の取り出し風景

古材流通ネットワークは、地域の工務店など地元密着型の企業で構成されているため、顧客の情報をいち早く入手できます。また入手した情報は、インターネットを通じて全国のFC企業が閲覧できる仕組みとなっています。
 古材を流通させる上で重要なポイントは、価格と品質の信頼性です。当社では、古材の選別や価格設定、保管、販売のノウハウを身に付けさせるために、独自の資格「古材鑑定士」を創設しました。その後、取扱業務に合わせて、「循環型民家解体士」、「古材活用士」、「古材取扱専任者」などの資格を新設し、スペシャリストの養成に努めています。これらの資格制度を導入したことで、FC企業のプロ意識の醸成や古材のブランド確立が進展しているそうです。

 

環境と地域に優しい古材住宅

住宅に古材を活用することは、森林の無駄な伐採を防ぐため、CO2削減にもつながり、環境面でプラス効果があります。
 また、地域活性化の面でもメリットがあります。現在の住宅建築業界はハウスメーカーを頂点としたピラミッド型となっており、木材業者、左官業者など各業者のオリジナリティは主張しづらい状況にあります。古材を活用した住宅の建築は、在来工法を手掛けてきた大工や中小工務店にとって技術を発揮できる絶好の機会です。厳しい経営環境の中、消費者のニーズに応え、オリジナルの住宅を提供するといった、エンドユーザー相手の事業への転換を図ることで生き残りをかけています。
 今後も、ハウスメーカーを通じて住宅を建築する人が圧倒的多数であると思われますが、こだわりの住宅を建てたい消費者のニッチ市場も少なからずあります。古材を使った住宅の建築が増加すれば、地元企業が元気になり、地域が元気になるのではないでしょうか。

 

使える物を当たり前に使う

「古材を使った住宅を普及させるためには、材木屋や大工はもっと本物の木の良さをアピールしていかなくてはならない」と井上社長は言います。当社では、5月31日を古材の日と定め、古材をしっかりとPRしていくとともに、木(資源)のありがたみを感じる日としています。
 全国有数の林産県“愛媛”発の古材流通ビジネスが全国にさらに広がって欲しいものです。

(薬師神 正浩)

画像:古材を使った施行事例

古材を使った施行事例

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