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西日本レポート

【兵庫県神戸市】「神戸空港(愛称:マリンエア)」誕生! -関西地域に3空港時代が到来-

2006.04.01 西日本レポート

 	「神戸空港(愛称:マリンエア)」誕生!

2月16日、「神戸空港(愛称:マリンエア)」が国内97番目の空港として開港した。
今回は、全国でも珍しい市営空港である「神戸空港」をレポートしたい。

開港までに約24年

開港までには紆余曲折があった。70年代に大阪国際空港(伊丹空港)の騒音問題が深刻化 し、伊丹空港の廃止を求める動きが起こった。こうした中で、関西地域に伊丹空港に替わる国際空港の建設計画が浮上。候補地としては、神戸沖、淡路島、明石 沖、泉州沖などが挙げられ、神戸沖が有力視されていたが、73年3月に当時の神戸市は神戸沖への新空港建設に反対した。そのため、泉州沖に関西国際空港 (関空)の建設計画が決定し、94年9月に国内初の海上空港として開港した。関空の開港に伴い閉鎖される予定だった伊丹空港は、地元自治体の強い要請で存 続が決定した。
空港の建設を1度は拒否した神戸市であったが、82年6月、「神戸沖新空港計画試案」を発表し、新空港建設への意欲を示した。 90年5月に「神戸空港基本計画」が策定され、91年11月には、「第6次空港整備五箇年計画」に予定事業として組み入れられた。さらに、93年8月には 新規事業へ格上げされ、新空港建設に向けて順調に進行していた。ところが、95年1月に阪神・淡路大震災が起こり、その2年後には、一部の市民から「神戸 の復興を優先すべきだ」、「需要がないのに税金の無駄遣いではないか」との意見が強まり、反対運動が起こった。しかし、阪神・淡路大震災後の経済復興を目 指している神戸市が「市税を投入しない」と公約し、新空港着工に踏み切り、開港に至った。基本構想から約24年の月日がかかったのである。
開港により、半径25km圏内に3つの空港がある関西3空港時代が到来した。

関西地域にある3空港の概要

大阪国際空港関西国際空港神戸空港
開港日1939年1月1994年9月2006年2月
設置管理関西国際空港(株)神戸市
利用時間7~21時24時間7~22時

中心部から最短16分台でアクセス

神戸空港は神戸市中心部の三宮から直線距離で約8kmと近い。市内中心部の三宮駅から神戸 空港までの所要時間は、「ポートライナー」で最短16分台と、アクセスは抜群である。そのため、東京出張をこれまで新幹線の利用に限定していた大企業など が、航空機の利用も認め、所要時間の短縮などを図ろうとする動きが出始めているようだ。

新型「ポートライナー」

新型「ポートライナー」

自動車を利用する場合でも、三宮から20分程度である。阪神高速神戸線などの自動車道とも接続しており、阪神地区や姫路市など兵庫県西部、淡路島、四国からの利便性が高い。
海上交通に目を転じると、2006年7月に神戸市の第3セクターである海上アクセス(株)が、神戸空港と関空を約30分で結ぶ海上航路の営業を開始する。

羽田まで片道1万円

空港の運用時間は7時から22時までと、第3種空港では最長で、羽田便の神戸発が7時台に 3便、神戸着が21時台に3便など、ビジネスや旅行などでの利便性は高い。今後は深夜の航空需要増加が予想され、実績次第では、海上空港の強みを生かして 運用時間を延長しようとする動きも出てくるだろう。
就航路線は、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、スカイマークエアラインズ (SKY)の3社合計で7路線、1日27往復である。SKYは、搭乗率が低迷していた関空-羽田便を今年3月末で廃止し、神戸-羽田便を1日7往復就航さ せた。航空料金を片道1万円に設定し、価格面での競争力をアピールしている。

就航便数(往復)

JALANASKY合計
羽田(東京)22711
鹿児島2204
那覇(沖縄)2204
新千歳(札幌)2103
仙台1102
新潟0202
熊本1001
合計1010727

新たな観光スポットに!

旅客ターミナルビルは、「コンパクトで誰もが使いやすいターミナル」がコンセプトの3階 建て(一部4階建て)である。主な特徴は、出発階と到着階の動線を分離していることや、約10mの連絡デッキでポートライナーの駅と接続しているため、搭 乗までのアクセスが非常によいことだ。また、視覚障害者や外国人に対し、施設案内や搭乗時刻などの情報を伝える音声案内システムを導入していることも特徴 的だ。
出発ロビーがある2階には、和洋菓子やチョコレート、神戸ビーフ、灘の酒、明石ダコなど、神戸ならではの名産品が数多く販売されている。 なかでも、神戸に本店を置く和洋菓子店が並ぶ「神戸スイーツコーナー」では、空港限定商品が人気を集めている。旅客ターミナルビルには、3階の飲食店など を含めて27店舗が出店しており、雇用創出効果が出ている。
屋上階からは、北には神戸市街地と六甲山や摩耶山、南に大阪湾、西に明石海峡大橋 と、海上空港ならではの360度見渡せる眺望が大きな魅力になっている。特に、神戸市街地から六甲山にかけての夜景は、神戸の新たな観光スポットとして幅 広い年齢層からの人気を集めることだろう。

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展望デッキから見た神戸市街の眺望

展望デッキから見た神戸市街の眺望

神戸空港では、環境保全・創造施策にも積極的に取り組んでいる。空港島周囲には環境創造 型護岸を整備中で、その一部を市民が水と親しみやすい階段式とし、親水緑地と開放的な水辺空間の整備が進められている。また、空港島西側緑地には、海水浄 化を図るための人工ラグーン(注)が整備され、それを取り巻くように砂浜や磯浜を設け、市民が気軽に利用できる大規模な親水公園の整備が進められている。

整備が進められる「人工ラグーン」(2006年1月現在)

整備が進められる「人工ラグーン」(2006年1月現在)

(注)ラグーンとは、岩や砂に囲まれ、海水が出入りする浅い海水池のこと。

開港が医療産業都市づくりに貢献

神戸市では、神戸空港に隣接するポートアイランドを中心に、98年9月に公表した「神戸 医療産業都市構想」を進めている。これは、国の「都市再生プロジェクト」として、先端医療クラスターを形成し、高度医療の提供と雇用の確保、将来的には海 外(特にアジア諸国)の医療技術の向上に貢献できる拠点づくりを目指している。

神戸医療産業都市の目指す中核機能

1.先端医療センター A.臨床試験(治験)
B.細胞・遺伝子治療
C.医療機器等の研究開発機能
2.メディカルビジネスサポートセンター ビジネス支援機能等
3.トレーニングセンター 人材育成支援機能

神戸市によると、計画通り実現すれば最終的に約18千人の雇用と年間3,300億円の経済効果が創造されるとしている。今年2月現在、進出企業は80社を超えており、開港が医療ベンチャーの起業や創業、医療関連企業や大学などの進出を促したといえる。
また、神戸空港は防災拠点としての役割を担っている。阪神・淡路大震災では、道路や鉄道が寸断され、救援物資の輸送などを航空機やヘリコプターで行った が、ヘリポートが近くになく、十分な活動ができなかった。しかし、神戸空港開港により、災害発生時に食料や医薬品、衣類などの生活必需品の輸送が迅速にで きるようになることが期待される。また、重傷者の緊急搬送なども可能になり、救急医療体制の充実が図られるなど、神戸空港が地域社会にとって大きな役割を 果たすことになるだろう。

空港の集客力を高めることが目標

神戸空港の建設に当たっては、約3,140億円という巨額の建設費が投入された。それを 主に空港島の土地売却で返済する計画であるが、土地売却は今のところほとんど進んでいない。また、滑走路などの整備や維持費は着陸料収入で賄う計画であっ たが、当初計画されていた大型機ではなく、中・小型機がメインとなるため、着陸料は当初計画を大きく下回る見通しだ。
そのため、神戸市は、神戸 空港のアクセスの良さをアピールし、搭乗率を国内便の平均搭乗率である63%前後(2004年度)から70%以上を目指している。そうなれば、空港利用客 数や就航路線の増加につながり、空港周辺の土地の利用価値も高まるため、土地売却が進むとみている。しかしながら、対抗する新幹線の運賃引き下げ等の動き もあり、決して楽観できる情勢ではないだろう。

ポートアイランドと空港島を結ぶ「神戸スカイブリッジ」

ポートアイランドと空港島を結ぶ「神戸スカイブリッジ」

航空需要増加を期待!!

関空は「国際空港」、伊丹空港は「国内基幹空港」であるのに対し、神戸空港は「地方空 港」として、神戸とその周辺地域の住民約450万人の航空需要に対応していく。3空港それぞれの役割は明確である。今後は関西3空港のネットワークを生か し、関西圏域全体の航空需要を増加させていくことが期待される。
神戸空港が地域活性化の起爆剤となり、多くの人々に利用されるとともに、阪神・淡路大震災以降、経済復興を目指す神戸のさらなる発展に貢献することを願いたい。

(越智 洋之)

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