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くろーずあっぷ中予

小田町 グリーンハイランドは21世紀のビジョン(97年10月)

1997.10.01 くろーずあっぷ中予

 小田町は、松山市から西南に約45kmにあり、四国のほぼ中央部に位置する。標高1,300~1,500mの四国山系を背に、総面積の90%を山林が占める純峡谷型の地形の中で、小田川が町の中心を東西に走る。南東部には、四国カルスト県立自然公園の一部をなす小田深山がある。
 「グリーンハイランド小田の創造」を基本理念とした、「豊かな心に満ちた緑林文化とグリーン産業のまち」、「自然との調和の中で生きる」、を町是としている。他の山間地と同様の数多くの課題はあるが、現在、21世紀プランとして、第2次振興計画が掲げられ、着実に推進されている。
 その一端を紹介したい。

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深まる秋 獅子越荘(純木造ロッジ)・小田深山渓谷

 

ユニークなODAの木プロジェクト

 「山とは言えない小さな丘に、木が数えるほどしか生えていませんでした。木がもうちょっと生えているだろうと思っていましたが、想像以上に緑は少なくなっていて、森が深刻な状況にあることに、とてもびっくりしました。森林の大切さ有難さを知ることができました」。
 これは、94年夏から毎夏行っている地元中学生の海外派遣事業(国際化事業)での報告レポートの一文である。将来を担う人材育成のため、タイ東北部に派遣し、国際協力事業団(JICA)の造林プロジェクトを見学するとともに植林に参加。学校訪問、ホームスティ等も行い、現地で体験学習を行っている。世界的に環境問題が注目されるなか、特に熱帯地域の森林破壊は、伐採禁止にまで及んでいる。タイの現状を他山の石ともする本事業は意義深い。
 「ODAの木プロジェクト」は、小田のローマ字表記を、政府開発援助(ODA)ならぬ自治体レベルの公的な開発援助、国際貢献と解釈し、地球規模で考え行動する教育、文化、地域づくりを目的とする。
 93年度から5ヵ年計画でスタートした本プロジェクトは、基幹産業である“木”をベースにした次の事業からなる。

① 国際化事業 ・・・ 中学生タイ国派遣事業、林業技術者の海外からの受入事業、県内留学生との交流
② 環境教育事業 ・・・ 西日本の環境教育の拠点とした「森の学校」の企画・運営
③ ブランド事業 ・・・ 近い将来の小田銘木の統一ブランド化を狙ったPR・イメージアップ活動、各種商品(木工芸品、キャラクターグッズなど)の開発推進である。

 今年4月には、本プロジェクトは、民間組織「ODAの木協会」も生み、町民を中心とする住民参加型の国際派まちづくり事業として展開している。
 「森の学校」は、当初、町役場職員等が指導員であったが、現在は、町民の自主的活動(ボランティア)となっている。手元にある、非木材紙のリーフレットでは、大人も対象に、1日コース(6月実施)、1泊コース(7月、10月実施)、グループ・団体での参加の受託コース(4月~11月実施)が案内されている。小田深山を会場にしたカリキュラムは、「森とあそぶ」、「森の工芸展」など魅力的である。休校となっている小田深山小・中学校跡を整備、拠点とする計画もある。

 

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町章(左)「小田」の文字を図案化。シンボルである小田深山を3本の杉で表している。

 グリーンはグリーン産業、ハイはハイレベルを意味している。グリーン産業では、従来からの栗、椎茸、葉タバコに加え、菌床椎茸、ハウス花卉栽培、ログハウスの受注販売、磨丸太などの銘木生産も好調である。この理念の最大の狙いは、農林・商工業、観光分野の基盤整備とソフト面の充実にあり、若者定住と人づくりにある。
 一方、「緑の価値」は、時代の流れにより変化する。「環境」と「資源」、「保全」と「利用」の間で揺れ動く。時間のギャップの中でも対応できる森林の育成も求められている。
 現在進めている国道(379、380号線)の改良により、県都松山都市圏の一翼を担う町として、週末レクリエーション機能、新産業立地機能、さらには、ベットタウン機能等への発展の可能性が期待される。すでに、町民には、町内と松山市内および周辺に、家族のライフプランに応じて“棲み分け”している例も多い。基盤整備により、諸機能がより現実味を帯びている。
 また、わが国の高齢化が進むなか、緑に包まれた好環境によって、健康福祉拠点の町として、都市近郊型適地としても注目されよう。99年3月完成にむけ延床面積約3,000㎡の総合運動公園体育館の建設事業も進んでいる。
 観光の中心は、小田深山渓谷で、自然林と人工林が融合した景観はみごとである。何より四季を通じて、天然の美で魅了させてくれる。スキー以外にも、テニス、マウンテンバイク、渓流釣り、キャンプ、手づくりイベントと飽きさせない。独特の麺と薬味の「たらいうどん」、特産の味噌と清流の魚の「アメノ魚の土手焼」・・・。
 麓の里では、樹齢1,200年以上の大イチョウ、平家の落人伝説にちなむ「灯篭まつり」(7月の最終土曜日)、170余年に渡って続く「山の神の火祭り」(8月15日)、文化祭・農業まつり・銘木まつりを重ね合わせた産業の祭典である。
「ふるさとまつり」(11月3日)などもある。
“小田、小田深山”の名は、素朴さの中にも、“古里の優しさ”をもイメージさせる。実際、現代人が忘れかけようとしている、悠久からの温かい財産を多く残している。
 読者の皆様に、是非、四季折々、機会をとらえ訪れることをお勧めする。

(菊地 芳博)

なお各事業、施設等についての詳細は下記に、お問い合わせ下さい。
〒791-35 愛媛県上浮穴郡小田町大字町村82
小田町役場 企画観光課
Tel:(0892)52-3111

詩情溢れる“小田の四季”

春・ ウグイス鳴いて、山笑う/百花繚乱の万華鏡
ヤマザクラ、ツツジの色鮮やかな競演、そして、萌え
立て草木のグリーン・シャワー
夏・ 草いきれ、蝉時雨、アマゴ釣り/棚田の稲穂に、ヤン
マが遊ぶ
緑の小道、近付く瀬音、夏とは思えぬ、深山の涼気
秋・ 渓谷を錦に染めて、流れる紅葉の舟、舟、舟
黄・橙・赤・紫と全山見渡す限り、見事なまでの衣更え
冬・ 森は静かに、冬をまどろむ
星降る里を雪化粧、澄み切る大気が星を山上へ
~「町勢要覧」より作

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