古くて新しい町 内子町
江戸や明治の昔にタイムトリップしたような古い町並みが、観光客をひきつけ、内子の町に新たな活気を呼んでいる。白壁や出格子の商家や民家、土蔵が立ち並ぶ八日市の町並みは、映画やドラマのロケ地として人気が高い。訪れる観光客も年々増え、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。これらはすべて、町並み保存運動を展開し、町の活性化を願った町民の努力によるものである。
歌舞伎劇場、内子座の役どころも大きい。大正5年に建てられた内子座は、老朽化して取り壊されるところを町民の熱意で復原され、年に9万人が利用するまでになった。観光資源としてだけでなく、多目的ホールとしても、町民によるカラオケ大会から芝居、文楽、寄席、コンサート、ファッションショーまで幅広い演目で活用されている。独特の懐かしさが漂う木造の劇場は、役者など演じる側の人々にも愛され、口コミで内子座を訪れる劇団やミュージシャンも少なくない。
内子座から全国に情報発信を
内子、五十崎の20歳から40歳までのメンバー43人からなる内山青年会議所は、内子座で「坂東玉三郎舞踊公演」事業を主催している。一昨年に引き続き2回目で、公演は11月2日から8日までの1週間に渡って行われる。1年がかりで約8千人分のチケット発券から公演当日の舞台設営、案内に至るまですべてを世話しているが、皆ボランティアである。ほとんどのメンバーが他に仕事を持ち、他団体にも所属するなど2足、3足のわらじでやっている。夜しか時間が取れず、深夜2時まで作業が及ぶこともある。無報酬でなぜここまで頑張れるのか。理事長の池田央さんは「内子のすばらしさを全国の人にわかってほしいから」と話す。「玉三郎の公演をきっかけに、全国から観にきた人達に内子のよさを知ってほしい。その人達が帰って周りの人に内子のことを伝えてくれたら、また新しい人が内子に来てくれる。地域の活性化につながる」。もちろん、地元の人々に本物の歌舞伎にふれてほしい、という思いもある。前回は、公演前にメンバー全員で町中に300本の幟を立てて回った。北海道や東京、松山などから来た大勢の観客で町は賑わい、演じた役者達も内子を気に入ってくれた。メンバーのほとんどは最後まで裏方で走り回り、公演を見ることもできなかったが、やりとげた充足感に包まれたという。今回は、前回より作業量が増えてメンバーの負担感は増しているが、経験を生かしてよりよい公演にしたいと意気込んでいる。
もっと内子を盛り上げよう!
内山青年会議所では、この他にも桜並木のライトアップや、バスガイドによる観光イメージ調査、映画上映会など様々なイベントや企画を行っている。内子には、こうした独自の企画で地域の活性化を図っているグループがいくつもある。このような町民主体の活動が、内子に人を呼び、町に活気を呼ぶ原動力となっているのだろう。ここ3、4年のうちに高速道路が内子まで開通すれば、松山・道後でとまっていた観光客の足が内子まで伸びるようになる。そのとき町並みの美しさに加えて、地元に活気を呼ぼうとする人々のホスピタリティにあふれたもてなしが、観光地としての内子の魅力を高め、ひいては町の活性化にもつながっていくのだと思う。
(石井 英子)