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知る人ぞ知る愛媛の観光地

【宇和島編】陸から海から楽しむ三浦半島

2017.08.31 知る人ぞ知る愛媛の観光地

[宇和島編]陸から海から楽しむ三浦半島

 南予最大のまち宇和島市の中心部には、城下町ならではの歴史と文化を感じさせる観光資源が数多くある。一方で、宇和海に面した地域は、真珠や魚類養殖の生産拠点として地域に富をもたらしてきたが、リアス式海岸と島々が織りなす風景は、観光資源としてのポテンシャルも高い。
 知る人ぞ知る愛媛の観光地・宇和島編では、宇和島市の西部・三浦半島を中心に紹介する。

「耕して天に至る」遊子水荷浦ゆすみずがうらの段畑

 三浦半島は、宇和島市中心部の南西、宇和海に突き出した細長い鉤状の半島である。半島の北側中央部の遊子地区・水荷浦は、港の周りのわずかな平地を急斜面が半円状に取り囲むような地形で、その斜面は階段状に石を積み上げた段々畑となっている。
 この「遊子水荷浦の段畑」は、2007年、全国で3例目の「国の重要文化的景観」に選定されている。
かつて「耕して天に至る」と称され、海に面した日当たりのいい斜面で栽培された農作物は、この地域に住む人の暮らしを支えてきた。
 しかし、最盛期には30ha以上あったという段畑も、養殖業が盛んになったことなどで離農が進み、2haほどまで縮小していた。NPO法人段畑を守ろう会が中心となり、復旧に努め、現在は5haほどまでに広がっている。そういった地道な活動の甲斐もあって、近年では、段畑を目当てに年間2万人が訪れるようになっている。
 現在、段畑には主にじゃがいもが植えられている。
昼間、温められた石が夜も温度を保ち、味の良いじゃがいもが育つという。じゃがいもから作られた焼酎「段酌」といった、特産品も生まれている。

こもぶち うみのいえ こもてらす

 遊子から、半島の先の蒋渕こもぶち地区に向かって県道346号線を車で走る。カーブは多いが、行く先々で変化に富んだ海岸線や養殖いかだが浮かぶ海の景色を楽しめる。半島の先は鉤状に曲がった地形で、ぐるりと陸地に囲まれた湾の中に蒋渕の中心集落がある。

入り組んだ湾が多い蒋渕地区



 マダイや真珠の養殖が主な産業である蒋渕で、養殖魚の直販や水産加工品開発、海の環境保全などに取り組む企業組合・こもねっとが、蒋渕の知名度向上や消費者との交流などを目的に2015年にオープンした交流拠点「こもぶち うみのいえ こもてらす」が、人気スポットとなっている。
 海にせり出すようにデッキが設置され、そこに置かれた流木のベンチがこもてらすのアイコンとなっている(前ページ写真)。このデッキをステージに、フラダンスやフラメンコ、ジャズ・ライブなどのイベントも行われている。特に宇和島市はホノルル市と姉妹都市でもあり、フラダンス愛好者が多いとのこと。ぜひ、ここで踊りたい!というグループが多
いのも頷ける。テラスを取り囲むように漁船を浮かべて、海からステージを見る、といったイベントも開催されたそうだ。 

ハワイアンフラのステージ


 こもてらすで、もう1つ人気なのが真鯛のランチ。こもねっとが開発した7種類のソースが選べる。おいしい真鯛を育むきれいな海を見ながらのランチは一味違う。
 事前予約すれば、海の幸をふんだんに味わえるバーベキューや、海鮮しゃぶしゃぶなども用意してもらえるとのことだ。
 宇和海の豊かな海が、愛媛を水産王国たらしめていることを実感する。おいしい魚をいただいたあとは、「魚見の丘」の魚貝藻霊供養塔に立ち寄って、海の恵みに感謝しよう。

 取材中、こもてらすの前でウェイクボードを楽しんでいた3人連れが、ひと休みしにやって来た。聞けば近くの漁師さんたちだという。マリンスポーツのあとに海を眺めながらビールとは、なんと優雅な昼下がりだろう。
 次に釣り船でやってきたのは、蒋渕が気に入って名古屋からたびたび釣りに来ているという男性。60㎝級のグレが狙える魅力的な場所なのだと、熱く語ってくれた。
 蒋渕の時間はとてもゆったりとしていて、いつまでもデッキで海を眺めていたくなる。

細木ほそき運河

 こもてらすからの眺めは、海なのに陸地にぐるりと囲まれて、まるで湖のようだ。途中、1ヵ所だけ陸地が切れて、向こう側の海が見える場所がある。
日本一小さいと言われる「細木運河」である。この運河ができたことで、宇和島港から船で蒋渕へ向かう場合、岬をぐるっと迂回する必要がなくなった。蒋渕の宇和海郵便局から戸島などへ郵便物を届ける郵便船も、この運河を通って行き来している。
 細木運河には赤い橋がかかっているのだが、残念ながら取材時は塗り替え作業中であった。

細木運河


「ぐるりうわ海」で海から半島を眺める

 半島の道はカーブが多いので、運転に不安のある方には、海からのアプローチがおすすめだ。
 半島や離島に住む方の生活の足となる定期旅客船が、3航路・1日7便運航しているが、高速船「あさかぜ」は、宇和島新内港を出発して遊子地区、蒋渕地区の各港と、戸島、嘉島に寄港し、再び新内港に戻る航路を走る。「ぐるりうわ海」のチケットを買えば、途中下船はできないが、1時間40分の宇和海クルージングが楽しめる。
 新内港に隣接する「みなとオアシスうわじまきさいや広場」で購入したじゃこかつパンを携えて11時35分発の「あさかぜ」に乗り込む。出港してしばらくすると、昨年完成した九島大橋の下をくぐり、最初の寄港地、遊子地区の水ヶ浦に到着。海から眼前に広がる段畑は、ローマの円形劇場か、メキシコのテオティワカン遺跡のように見えなくもない?
 半島北側の海岸線に沿って、いくつかの港に立ち寄りながらさらに進んでいく。海に向かって建てられた海岸端の祠や、赤や緑の小さな灯台、動物のような形の小島など、窓の外を流れていく景色を目で追う。

定期船「あさかぜ」の航路

 細木運河をくぐって蒋渕の湾に入った後は、ブリ養殖で有名な戸島や嘉島などを通って、新内港へと戻る。
 戸島の数えきれないほどの養殖いかだしかり、遊子の段畑しかり、宇和海の豊かな自然と、それを最大限活かすために努力を続けてきた人々の力を実感する光景であった。

(上甲 いづみ)

観光遊覧切符「ぐるりうわ海」の概要

「あさかぜ」の他に、宇和島新内港と日振島を結ぶ高速 船「しおかぜ」、新内港と嘉島・戸島・日振島を結ぶ普通 船「しらさぎ」が就航しており、それぞれ観光遊覧切符 が使える。

 便数/日所要時間料金
あさかぜ3便1時間40分2,100(1,050)
しおかぜ3便1時間40分2,100(1,050)
しらさぎ1便4時間1,500(750)

 ( )内は小学生料金
(2017年8月現在)


少し足を伸ばして…岩松 町並み散歩

西村邸(酒造場跡)

 宇和島市中心部から車で南へ20分ほど走った旧津島町の岩松地区へと足を伸ばしてみる。
 岩松は、作家・獅子文六が約2年滞在したことでも知られる。文六の妻が旧津島町出身で、太平洋戦争終戦直後ここに逗留した間の出来事をもとに、小説「てんやわんや」を書いた。岩松に暮らす個性豊かな住民との交流を描いたこの小説は、1948年から49年にかけて毎日新聞に連載され、人気を博した。
 まちを流れる岩松川の東岸には、その時代の雰囲気を残す古い旅館や、かつて酒造場であった建物などが残っている。


老朽化が進んだ空き家・空き店舗も少なくないが、江戸末期から昭和初期の懐かしい岩松の町並みを残そうと、地元では町並み修景に取り組んでいる。漆喰・ベンガラの塗り直しや木製建具への交換など、岩松らしい伝統的な町並みを維持するために必要な工事に補助を行っている。修景は徐々に進み、面として広がりつつある。
 岩松には、かつて3軒の酒造場があったが、現在、清酒を造っているところはない。しかし、宇和島市が「どぶろく特区」に認定されたことを受け、岩松町並み保存会メンバーが中心となり、どぶろく『なっそ』で酒造りの伝統を受け継いでいる。近年は、どぶろくの原材料を使った生甘酒も人気のようだ。

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