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西日本レポート

【佐賀県佐賀市】にぎわいを再び!佐賀市街なか再生の社会実験 「わいわい!!コンテナ」プロジェクト

2016.06.01 西日本レポート

にぎわいを再び!佐賀市街なか再生の社会実験 「わいわい!!コンテナ」プロジェクト

JR佐賀駅から歩いて約15分。飲食店が立ち並ぶ通りを抜けた先に、その“空き地”はある。
駐車場や空き地が増え、歩く人が減ってしまった佐賀市中心市街地をにぎわいのある街にすべく、社会実験として始まったのが「わいわい!!コンテナ」プロジェクトである。
今回は、この社会実験を中心に、佐賀市中心市街地活性化の取り組みについて紹介する。

人が街なかを歩かない

地方都市の人口減少は深刻だが、佐賀市中心市街地の定住人口は、実は緩やかに増加してい る。福岡まで1時間強と利便性が高いため、佐賀市は福岡のベッドタウンとしてちょうど良いのだそうだ。また、街の機能がコンパクトに集約されており、かつ 都会すぎないので、郊外から移住する人も多い。
ところが、定住人口が増加しているにもかかわらず、中心市街地の通行量は減少していた。
原因の1つは、郊外に出店する店舗が増え、街なかの商店街に空き店舗が目立つようになったことだ。飲み屋は多いため夜はにぎわうものの、昼の活気がなくなってしまった。もう1つは、典型的な車社会である佐賀市では、たとえ街なかでも、ちょっ とそこまで買物に行くだけでも車で移動する人が多いということである。そのため、街なかに出て、歩く人が減っていたのである。

人を集めよう!

そんな状況を打破すべく、2010年11月、住民・地元商店街・行政が連携して「佐賀市街なか再生会議」を立ち上げた。会議の座長には、佐賀出身の建築家、西村浩氏が市からの依頼を受け就任。以後のまちづくりのプロデュース役を引き受けた。
まずは目的を持って街なかに来る人が増えるよう、にぎわい再生の核となる4拠点(商業の拠点に老舗百貨店の佐賀玉屋、まちづくりの拠点に市街地再開発ビルのエスプラッツ、歴史・文化の拠点に佐嘉(さが)神社・徴古館(ちょうこ かん)地区、歴史・観光の拠点に呉服町・柳町地区)を定めた。
そして、それぞれの拠点に「行きたくなるもの」「行かなければならないもの」を配置した。例えばエスプラッツの近くにハローワークを誘致し、必然的に街なかに足を運んでもらうようにするといった具合である。結果、4拠点を中心に、街なかに出る人は増加した。
しかしそれだけでは不十分だ。街ににぎわいを取り戻すには、集まった人々をいかに“動かす”かが肝となる。4拠点をつなぐ回遊ルートの環境を向上させ、歩く人を増やすことが次のステップだ。

4拠点周遊イメージ図

4拠点周遊イメージ図

人を歩かせる仕掛け

拠点間を歩かせる仕掛けのひとつとして登場したのが「わいわい!!コンテナ」プロジェクト である。このプロジェクトは、老若男女問わずゆったり過ごせ、“みんなが立ち寄りたくなる場”を設け、街なかの回遊性を高めようとする"社会実験"であ る。NPO法人「まちづくり機構ユマニテさが」の運営で、2011年6月11日から12年1月31日までの8ヵ月間実施された。
ユマニテさがの担当者は、「コンセプトは、日常的な人の流れの延長線上でできること。既にそこにあるものを活用することで、コストとリスクを最小限に抑える。“実験”なのだから、たとえ失敗してもまたやり直せばいい、という気持ちでやっていました」と振り返る。
6基の海上輸送用コンテナをつなげた「わいわい!!コンテナ」プロジェクトの1号コンテナは、エスプラッツと佐嘉神社・徴古館地区をつなぐ道路沿いの空き地に設置された。
コンテナを選択したのは、移動や再利用がしやすく、いらなくなっても簡単に撤去できるからだ。ちなみにリースである。

わいわい!!コンテナ1

佐賀には本屋が多く、“本のまち”と言われた時代もあったが、郊外のショッピングモールに 大型書店が出店するのと並行するように街なかの書店が閉店、あるいは縮小された。それならばさまざまな層が楽しめる本をコンテナに入れてしまおうと、1号 コンテナはミニ図書館となり、司書が選んだ洋雑誌33冊、和雑誌66冊、絵本100冊、そしてマンガ30作品が並んだ。空き地には芝生が敷かれ、ウッド デッキも併設された。中心市街地に現れた原っぱとコンテナに、果たしてどのくらいの人が興味を示すだろうか。
8ヵ月の実験期間中に集まったのは、なんと約1万5千人。市民へのアンケートやインタビューでの評価も高かった。
しかし、人は集まったが、動かなかった。「わいわい!!コンテナ」の目的は、拠点間の回遊性向上である。集まっただけでは成功とは言えない。

わいわい!!コンテナ1

わいわい!!コンテナ1

わいわい!!コンテナ2

1ヵ所だけでは人の動きが鈍いということで、2012年6月9日から、「わいわい!!コン テナ2」プロジェクトとして、柳町寄りの空き地に2号コンテナが設置され、2ヵ所での社会実験が始まった。1号コンテナは、それまでの図書館から、サガン 鳥栖のサテライトオフィス・公式ショップとして活用されることになった。
ミニ図書館であった1号コンテナは、6基を連結させ、広い1つの空間を共有していたため、世代や立場の垣根を越えたコミュニケーションが生まれた。一方で、読書をしたい人、おしゃべりをしたい人、遊び回りたい子どもたちなど、利用目的の違う人々が混在していた。
そこで2号コンテナは、1号コンテナの課題や市民の評価を踏まえ、[1]読書コンテナ [2]交流コンテナ [3]チャレンジコンテナ [4]WC(トイレ)コンテナと、利用目的別にコンテナを分け、それぞれの目的に応じた使い分けができるよう工夫した。
[1]の読書コンテナには、「わいわい!!コンテナ1」の時と同じく、国内外の雑誌や絵本、マンガが並んでいる。クリークと呼ばれる佐賀特有の水路沿いに設置されているため、水辺でゆっくり読書を楽しむことができる。
[2]の交流コンテナは、子どもからお年寄りまで世代を超えて利用できる憩いのコンテナである。床はマット敷きで、靴を脱いでのびのびと過ごせる。
新しい試みである[3]のチャレンジコンテナは、駆け出しのアーティストが個展を開いたり、お店を出したいがまだ自信がないという人がお試し出店に利 用したりと、名前の通り、市民が“チャレンジ”できる場となっている。
「わいわい!!コンテナ2」プロジェクトも市民に好評だった。2年目の 社会実験で、2号コンテナだけでも回遊性が十分確保できることが分かり、1号コンテナは撤去することになった。コンテナは民間企業が買い取り、跡地は、 2014年度から市が“原っぱ”として整備している。

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コンテナから飛び出す

コンテナの利用者は、2011年度の14,863人から、15年度には64,363人と、 飛躍的に増加した。SNSなどによる情報発信を強化したことが奏功し、「わいわい!!コンテナ」の認知度が上がったことや、街なかに人を呼び込む施設とし て市民の間に定着してきたことの表れと言えるだろう。
注目すべきは、市民が自発的にコミュニティを築くようになってきたことだ。例えばエレク トーンが得意な人の呼びかけで、合唱団を作ってコンサートをしてみたり、雑貨作りが趣味という人が教室を開いてみたり。そのようなコミュニティができるこ とで、今まで決まった場所以外には出歩かなかった人たちが街に集まるようになった。そして、集まった人たちが、コンテナにとどまらず、さまざまな場所に “動く”ようになってきた。
合唱団は地域のデイサービスなどで歌を披露するようになった。チャレンジコンテナで初めて個展を開いたアーティスト は、4拠点の1つである柳町にアトリエを構えるようになった。コンテナをきっかけにできたコミュニティや、コンテナで育った才能の芽が、コンテナを飛び出 すようになってきたのだ。

オープンシャッタープロジェクト

街に力がついてきたことで、新たな試みも始まった。コンテナがある呉服元町の商店街の空き店舗を、期間限定で希望者に貸し出す「街なかオープンシャッタープロジェクト【ひなのみせ】」が、2015年2月21日からの1ヵ月間開催された。
10人くらい希望者が集まればいいと考えていたが、ふたを開けてみると41件もの応募があり、最終的に20店舗が出店した。
【ひなのみせ】は、その後も第2弾が15年7~8月、第3弾が10~11月に開催された。そのなかで出店した店舗のうち2店舗が独立し、呉服元町に店を構えている。

【ひなのみせ】出店の様子

【ひなのみせ】出店の様子

“空き地”のこれからはプレイヤー次第!

“空き地”という交流の場ができたことで、人と人が連携するようになってきた。今までそれぞれが独自に行っていた小さな活動が、交流の場を介してつながってきている。集まった人がほかの人を街に引き込み、面白い化学反応が起こりつつある。
プロジェクトが始まって5年経つ。この“社会実験”をいつまで続けるのか、これからどうしていくのか、方向性を決める時期に来ているが、これから“空き地”がどう変わっていくのかは、プレイヤー(市民)次第だ。
行きたい街、住みたい街として人が集まり、商業が活性化することでにぎわいあふれる街にするという最終目標に向けて、“空き地にコンテナ”からのまちづくりがどのように広がりを見せるのか、これからも目が離せない。

(加藤 あすか)

調査月報「IRC Monthly」
2016年6月号 掲載

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