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愛媛の島

岩城島(上島町)

2014.03.01 愛媛の島

タイトル

愛媛の島シリーズ第8回は、瀬戸内海のほぼ中央に位置し、「青いレモンの島」として知られる岩城島を紹介する。

 

島本陣として栄えた島

岩城島は、瀬戸内海のほぼ中央にあり、古くから内海交通の要衝として栄えた。室町時代には水軍の本拠地として名が知られ、江戸時代には、伊予松山藩の島本陣が置かれた。参勤交代の途中に藩主が立ち寄ったため、お茶屋など藩の施設も設けられ、繁栄を極めたようだ。
明治22年、町村制の施行により岩城村となり、「平成の大合併」で、平成16年に生名いきな村、弓削ゆげ町、魚島うおしま村と合併し上島かみじま町となった。
主要な産業は、温暖な気候と傾斜地を生かしたかんきつの栽培で、レモンのほか、ライム、紅まどんな、たまみなど実にさまざまな品種がつくられている。農業のほかに、マダイの養殖、ブランド豚「レモンポーク」の養豚なども盛んに行われている。また、島内には造船関連企業が複数あり、造船業も島の経済を支える重要な産業となっている。

 

青いレモンを全国へ

今では「青いレモンの島」として名が知られる岩城島だが、このレモンを使って島おこしを始めたのは今から30年ほど前のことだ。それ以前にもレモン栽培は行われていたが、昭和39年の輸入自由化により国産のレモンは大打撃を受け、レモン農家は急激に減った。そんななか、昭和46年に愛媛県果樹試験場の岩城分場長として赴任した脇義富氏が、レモンの栽培を農家にすすめ、防腐剤やワックスを使わない新鮮なレモンの代名詞として「青いレモン」を全国に売り出した。東京などから注文が相次ぎ、「青いレモンの島」という名称で商標登録もしている。
露地栽培とハウス栽培の両方が行われているので、1年を通して安定的に収穫ができ、夏から12月にかけては青いレモン、年が明けると黄色く色づいたレモンが出荷される。「レモンの散歩道」と名づけられた1kmほどの道のりを歩けば、レモンなどかんきつ畑が続く岩城らしい風景を満喫することができる。

画像:レモンの散歩道

レモンの散歩道

岩城のレモンはさまざまな料理で楽しむことができる。地元レモン農家が営むレストランでは、レモンを主役にし、瀬戸内の新鮮な魚介類を使った「レモン懐石」を味わうことができる。岩城港近くにある「いわぎ物産センター」では、100%レモン果汁やマーマレード、お酒などレモンを用いた加工品が製造・販売されている。同センターではレモンだけでなく、フレッシュなかんきつ類や、レモンをえさに育ったレモンポーク、岩城の名産の1つである芋菓子なども購入できる。

画像:レモンの加工品

レモンの加工品

 

積善山の三千本桜

岩城島の観光スポットとして欠かせないのが、島の中央にそびえる積善山せきぜんざんだ。標高370mの山頂にある展望台からは360度のパノラマが広がり、瀬戸内海の多島美や四国山地、遠くは中国山地まで見渡せる。
春になると、ソメイヨシノやオオシマザクラ、山桜など約3,000本の桜が咲き誇り、桜色の帯が山肌に広がる光景は、「天女の羽衣」とも称される。毎年行われる「いわぎ桜まつり」は、和太鼓演奏やバードウォッチングなどのイベントで大いに盛り上がる。この祭りが開かれる4月には、1万人を超える人が訪れるそうだ。岩城では、桜の名所としての積善山を県内外にPRしており、来訪者は年々増加しているとのことだ。桜の季節以外にもツツジやミモザなどの花々を見ることができる。
さらに、積善山にはパラグライダーができるエリアもあり、県内外から愛好家が訪れている。

画像:積善山山頂からの眺め

積善山山頂からの眺め

 

舟形ウバメガシ

「レモンの散歩道」の途中、坂の中腹に国の重要文化財に指定された祥雲寺しょううんじ観音堂がある。この観音堂は、室町時代中期、京都の金閣寺や銀閣寺と同時期に建てられた、一重唐様からよう仏殿だ。
祥雲寺の本堂の裏手に自生しているウバメガシは、県の天然記念物に指定されている。樹齢は約600年と言われており、高さ6m、幹の周囲が3m、枝の広がりが約30mという巨木だ。全体の形と中央に突き出た主幹の上部が舟の帆柱のように見えることから、「舟形ウバメガシ」と名づけられている。境内からはこの巨大なウバメガシと瀬戸内海を一緒に眺めることができる。

画像:舟形ウバメガシ

舟形ウバメガシ

 

Iターン者の定住促進

離島の集まりである上島町では、人口の減少、少子高齢化は非常に深刻な問題である。岩城島には、造船関連企業が複数あり、ある程度の雇用が確保されていることから、人口減少のスピードは島しょ部のなかでは比較的遅いとも言われるが、島内に高校はなく、若い人がずっと島に残ることはまれで、農家の数も減少している。そこで岩城を含む上島町では、I・Uターン者の定住促進を図っている。
この事業には、1週間のワーキングホリデー、1~3ヵ月程度のお試し就業研修事業、2年以内のインターン事業の3種類がある。いずれも、農業の担い手を確保することが目的で、地元の農家で島外の人を受け入れ、一定期間実際に働いてもらうというプログラムだ。この定住促進事業や、総務省の「地域おこし協力隊」制度を使って定住し農業をしている世帯は、現在6世帯あるそうだ。「青いレモンの島」として岩城島の名を広めた脇義富氏が代表を務める「NPO法人 豊かな食の島 いわぎ農村塾」では、都市部の大学に赴き岩城の農業の魅力を伝えるほか、新農業人フェアに参加し農業の新たな担い手を募るなどの活動を行っている。
今後も定住者を増やしたい考えだが、これらの事業に対する問い合わせはあっても、受け入れ農家がなかったり、すぐに住める空き家がなかったりと、受け入れ態勢のさらなる整備も必要となっている。

画像:ワーキングホリデーのようす

ワーキングホリデーのようす

 

サイクリングコース

岩城島の県道は、1周が約10km、通勤時を除けば交通量も少なく、また島内には信号機がないため自分のペースで走れるなど、サイクリングに適したコースと言えるだろう。そのほかにも海沿いを走る外周道路や山の中腹を走る農道など、コースの選択肢もいくつかあるので、レベルや見たい景色に合わせてコースを選ぶのもよいだろう。
近年のサイクリングブームで、上島町を訪れるサイクリング客は増えているそうだ。港の近くの物産センターでレンタサイクルも利用できる。ただ、サイクリング目的で訪れる人は、自分の自転車に乗ってくることがほとんどだそうだ。そこで岩城島を含む上島町の島々を自転車で回ってもらおうと、船の自転車料金が無料になるキャンペーンを行っている。上島町内の航路だけではなく、広島や今治からの航路でも無料となっている。

 

島々の交通事情

岩城島は面積8.97km2という小さい島ながら、港が3ヵ所ある。生口島との間を結ぶ小漕おこぎ港、因島との間を結ぶ長江港、今治との間を結ぶ岩城港だ。周辺の島では、弓削島と佐島を結ぶ弓削大橋、佐島と生名島を結ぶ生名橋が架かっている。町村合併によるスケールメリットを生かすために、生名島と岩城島間の架橋の実現が期待されていたものの、現時点での岩城島は、島外と行き来するには船を使うしかない、完全な離島だ。その架橋構想がようやく現実味を帯び始め、今後10年以内には実現する見込みである。現在、橋の愛称を募集しており、4月の「瀬戸内しまのわ2014」のオープニングに合わせて発表する予定とのことだ。
広島や今治に買い物に行っている地元の人にとっては、まだまだ十分な交通事情とは言えないようだが、この橋が架かることで、町内での人の行き来は活発になるとの声もある。

画像:港のようす

港のようす

 

瀬戸内しまのわ2014

今年は、瀬戸内海国立公園指定80周年を記念する、イベント「瀬戸内しまのわ2014」が開催される。
岩城島では、民間イベントの1つ「岩城島の浜辺キャンプと夜景を楽しむ会」が企画されている。積善山からの絶景を眺め、海水浴場では島民とふれあいながらキャンプを楽しんでもらおうという企画だ。春は夜桜、夏は流星群、秋は中秋の名月という風に、その季節ごとの美しい景色を見てもらう。来島者だけではなく、受け入れる島民側も家族ぐるみで参加するので、参加者同士のより深い交流が生まれるかもしれない。
また、「瀬戸内しまのわ2014」では国際サイクリング大会が開催されるため、サイクリング客がさらに増加することが期待されている。

四季折々違う顔を見せる岩城の自然やおいしい食べ物をぜひ一度楽しんでみてはいかがだろうか。

(門田 真理子)

参考文献
「SIMADAS(シマダス)」(財)日本離島センター

岩城島データ

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