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愛媛の島

興居島(松山市)

2013.01.01 愛媛の島
画像:高浜港から興居島を望む

高浜港から興居島を望む

今回から、くろーずあっぷ「愛媛の島」と題して、愛媛県内の有人島を紹介する。
愛媛には200近い島があり、愛媛が誇る地域資源の1つでもある。そのうち、有人島は36島(平成22年国勢調査時点)あり、島ごとに違った歴史や風土、文化を持つ。そこで本シリーズでは、愛媛の島の魅力を改めて紹介したい。第1回は、松山市の興居島を取り上げる。

 

歴史ある興居島・島名の由来

松山市の西部にある興居島は、高浜港からフェリーでわずか10分ほどの、松山市民にとって一番身近な島である。この興居島では、島のあちらこちらから縄文土器が発見されており、古代から気候、産物に恵まれ、人が住みやすい島であったことがうかがえる。
ところで、「興居島」という島名、「ごご島みかん」で知られた地名ながら、難読な地名の1つではないだろうか。
ある伝承では、この島に住んだ伊予皇子の妻和気姫に3人の子どもが生まれ、その末子の小千御子が、母がいる島、母居ぼご島と呼んでいたのが、興居島に転じたとされる。ほかにも、「凝堅こりかたまりて成出なりでた」との意味から生まれた地名という説があり、古語の「こごし(岩がゴツゴツと重なりけわしい)」から「こご島」になり、興居の字が当てられ、ゴゴと呼ばれるようになったとされる。いずれにしても島の歴史の長さをうかがわせる伝承・由来であることに違いはない。

 

島の宝(1)「伊予小冨士」

島の宝と言うべきものの1つに、小冨士がある。島のシンボル、高さ282mの小冨士は、その美しさから伊予小冨士とも呼ばれ、地元では「こふじさん」の愛称で親しまれている。
郷土の俳人、正岡子規は「鶏なくや小冨士の麓桃の花」と詠み、島の美しさを、なだらかな稜線を持つ小冨士とともに表現した。現在は、かんきつ栽培が盛んな興居島だが、子規の句にもあるように、かつては桃の栽培が盛んで、島で「お花見」と言えば桜ではなく、桃の花見のことを言うほどだったそうだ。その後、りんごやびわなども栽培され、現在のかんきつ主体の産地に移行していった。

画像:伊予小冨士

伊予小冨士

 

島の宝(2)「船踊り」

古くから伝わる伝統芸能「船踊り」も、島民が誇る島の宝の1つだ。
船踊りは、島の氏神様、和気姫をまつ和気比賣わけひめ神社の秋祭りに毎年奉納される踊りで、県の 無形民俗文化財に指定されている。
その起源は、忽那諸島に本拠を置く伊予水軍が戦いを終え島に凱旋がいせんした時、出迎えた島民に戦いの様子を伝えるため行った、身振り手振りの踊りとされる。
踊りは、その名のとおり、船の上に設けられた舞台で行われ、「伊予水軍」のほか、「曽我兄弟」など歌舞伎から取り入れた演目も踊られる。勇壮な踊りは、郷土芸能としては珍しい、無言で行う黙劇として演じられる。船踊りは、国土交通省の「島の宝100景」にも選ばれている。

画像:船踊りの様子  撮影:江刺直樹氏

船踊りの様子  撮影:江刺直樹氏

 

島の宝(3)「島四国」

もう1つ、島の宝を紹介したい。興居島には、四国八十八ヶ所のミニチュア版、島四国八十八ヶ所がある。今治の大島や香川県の小豆島などでも行われている島四国は、島を巡り、八十八ヶ所の札所を回ると、四国八十八ヶ所を巡拝したのと同じご利益があると伝えられている。
興居島の島四国は、毎年4月20日と21日の2日間にわたり、島を挙げて実施される。島外からも多くの人が巡拝に訪れ、2日間で千人もの人が参加する。そのため、島四国の前には遍路道の草刈りをしたり、当日はお茶やくだものを振る舞ったりと、島は準備やお遍路さんへの接待に忙しくなる。
興居島の島四国巡拝コースは、島をほぼ一周する約30㎞の行程で、島の自然やおもてなしの心が味わえるため、リピーターが多いそうだ。

画像:島四国の様子  撮影:江刺直樹氏

島四国の様子  撮影:江刺直樹氏

 

島の楽しみ方

島の魅力の1つは、海や山の自然を一度に体験できることではないだろうか。興居島では、さまざまなイベントが企画されており、島の魅力を存分に楽しむ機会がある。
なかでも人気を集めているのは、島の自然と食を一度に楽しめるウォーキングイベントだ。島の活性化に取り組むボランティアグループ「ごご島里山作りグループ」は、「ごご島の日(5月5日)ウォーキング」や「ごご島みかんの日(11月3日)ウォーキング」といった催しを開催している。島外から大勢の人が参加し、募集を開始して数日で定員に達するほどの人気だそうだ。季節ごとの景色を楽しみながら島内を歩いた後、昼食には島の食材をふんだんに使った手料理が振る舞われ、参加者は大満足で帰っていくと言う。

画像:ウォーキングイベントの参加者たち

ウォーキングイベントの参加者たち

ほかにも、農家による収穫&島ごはん体験や婦人グループによる島の食材を使った本格石釜ピザ焼き体験など、島ならではの体験メニューが用意されている。体験メニューは、平成22年度に行われた松山島博覧会(しまはく)を機に始まったものが多く、島の魅力向上に一役買っている。
ウォーキングイベントや体験メニューは事前の申し込みが必要になるが、そうしたことをしなくても、松山市の中心部から1時間足らずで訪れることができる興居島は、気ままな日帰り旅にはもってこいの場所だ。
島にはビューポイントも多い。そのうちの1つ、島の南部にある「恋人峠」は、穏やかな瀬戸の内海と松山市街を一望できる絶景スポットだ。テレビの旅番組でも紹介され、デートスポットとしても人気が高まっているそうだ。

画像:恋人峠

恋人峠

 

島の課題

自然に恵まれ、住み心地が良さそうな興居島だが、大きな問題もある。高齢化と人口減少だ。
かつては7,000人近くが暮らしていたが、今では1,200人台にまで減少し、高齢化率は50%を超えている。島には小学校、中学校はあるが、高校からは島外の学校に通うことになる。その後の就職や進学を機に、島を出たまま帰らない若者がほとんどだそうだ。
島の産業と言えば、かんきつなどの果樹栽培だが、多くの農家が後継者不足の問題を抱えている。しかし、かんきつ価格の低迷もあり、子どもに跡を継がせたくないと考える農家も少なくないそうだ。
前述のごご島里山作りグループは、メンバーの多くが80歳以上の高齢者だが、みな、少しでも多くの人が島を訪れ、喜んでもらえるよう熱心に活動している。しかし、こうした活動も次の担い手がいなければ、継続できなくなる。
島の魅力を広く知ってもらい、島の自然や文化を後世に伝えていくことも重要だが、島民にとって住みやすい島を維持していくためにも、若い力が必要とされている。

 

島の歩き方

伊予鉄道の高浜線に乗り、終点高浜駅まで行くと、駅の向かい側に高浜港がある。そこから由良港を結ぶ便と、泊港を結ぶ便が一日14便ずつ出ており、アクセスは良い。
電車とフェリーを乗り継ぎ、徒歩で島に渡り散策やウォーキングを楽しむもよし。フェリーに車を乗せ、島内をドライブするもよし。あるいは、港にあるレンタサイクルを借りるもよし。思い思いのスタイルで島を楽しむことができる。

画像:御手洗地区

御手洗地区

取材中、女性のグループが吟行を楽しむ姿を見かけた。子規の弟子、河東碧梧桐へきごとうも、島に滞在した際にいくつかの句を詠んでいる。興居島に行くといい句が思い浮かぶのかもしれない。
島の魅力は行ってみないとわからない。誰でも気軽に楽しめる島、興居島。次の休みには、ぜひ、GO ! GO ! 島へ(ごごしまへ)。

(石川 良二)

参考文献
「ふるさと興居島」興居島中学校
「ふるさと興居島未来へ」興居島中学校
「愛媛の地名」堀内統義
「SIMADAS(シマダス)」財)日本離島センター

興居島データ

画像:地図

住所松山市門田町、由良町、泊町
人口1,279人(平成22年国勢調査)
面積8.49km2
周囲約24km
アクセスフェリー 高浜港⇒ 由良港
高浜港⇒ 泊港
運賃はいずれも片道大人230円
観光情報 里島めぐりホームページ
http://ritoumeguri.com/
(まつやま里島ツーリズム連絡協議会)
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