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西日本レポート

【香川県】「うどん県。それだけじゃない香川県」 ~県のPRプロジェクトと企業・自治体の取り組み(香川県)~

2012.08.01 西日本レポート

「うどん県。それだけじゃない香川県」 ~県のPRプロジェクトと企業・自治体の取り組み(香川県)~

「香川県は、『うどん県』に改名いたします」。
昨年10月、香川県が改名するという内容の県のPR動画がネット上に公開され、全国に「うどん県」の名が知れ渡ったことは記憶に新しい。
今回は、香川県の「うどん県。それだけじゃない香川県」をテーマにしたPRプロジェクトと、それに関連した企業、自治体の取り組みを紹介する。

うどん県プロジェクトの裏側

 香川県のPRプロジェクト(以下、うどん県プロジェクト)は、県の認知度アップ、イメージアップを図るための情報発信事業として、県が事業企画を公募し、広告会社が提案したものだ。
実は、このうどん県プロジェクト、はじめから「改名ありき」ではなかったそうだ。
当初は「We love うどんでも、うどんだけじゃない!」というキャッチフレーズの提案だった。しかし、これではインパクトが足りないということで、何度も協議を重ねた結果「うどん県への改名」のアイディアが出てきたと言う。こうして、うどん県副知事こと俳優の要潤さんが「うどん県」と書かれた額を手に記者発表をするPR動画が誕生した。ちなみに、うどん県改名の記者発表のイメージは、故小渕元首相(当時官房長官)が行った、新元号「平成」の発表会見を参考にしたそうだ。
また、インターネット上の動画公開だけでなく、羽田空港や六本木の大型ビジョン、地下鉄の車内でCMが放映されたり、空港や駅構内にポスターが貼り出されたりと、東京では大規模な「うどん県」キャンペーンも行われた。こうした巧みな戦略によって「うどん県」の名が全国に知れ渡った。

うどん県プロジェクト真のねらい

 「さぬきうどん」は、うどん店巡りブームやセルフ式うどん店の全国チェーン展開、映画「UDON」などの影響で、全国的にも認知度が高い。
一方、香川県自体の認知度は、民間会社による都道府県の地域ブランド調査(平成22年)で、全国中位の24位だった(ちなみに愛媛県は36位)。
かつては47位だったこともあり、香川県は、「選ばれる香川」を目指してこれまでもPR活動を展開してきた。そして今回のうどん県プロジェクトの成果により、「うどん県=香川県」として一気に認知度アップを果たした。
しかし、うどん県プロジェクトのねらいは単なる認知度向上にとどまらない。うどん以外にも、香川には数多くの魅力ある産物、観光資源がある。「瀬戸内海」「食」「アート」をテーマに、うどんを含めた、それらの香川の魅力を広くPRすることが、プロジェクトの真のねらいである。「うどん県」の後に続く、「それだけじゃない香川県」の言葉に、その強い思いが込められている。
うどん県 それだけじゃない香川県

「うどん県」に対する声

 昨年は、「うどん県への改名」にはじまり、「うどん県宛ての年賀状」と、「うどん県」の話題が、あらゆるメディアで連日取り上げられた。
ただ、「うどん県」が頻繁に報道され、また、改名発表のシーンが、あまりに迫真の演技・演出であったためか、「本当に改名するの?」という問い合わせがあったそうだ。
昨年末、「うどん県に年賀状を届けて欲しい」と、うどん県副知事の要潤さんが、日本郵便に要請するシーンが報道され、またも話題となった。このPR作戦第2弾ともいうべきアクション、実は当初から計画された計算ずくの行動ではなく、「うどん県宛ての年賀状を出したい」との意見が寄せられ、それをまさに体当たりで実現したものだった。
また、「うどん県への改名」に対する、地元や香川県出身者の反応は、おおむね好意的なものが多いようだが、一部で戸惑いの声や疑問の声もあったようだ。しかし、そうした声は、うどん県への改名が、多くの香川県民、香川県出身者にとって、ふるさとへの思いを再認識するきっかけになったからこそ出てきたものであり、そうした意味では、うどん県プロジェクトは、対外的なPR以外でも大きな成果を挙げたと言える。

陸・海・空、すべて「うどん」

うどん県プロジェクトの活動によって、うどん県のネーミングが浸透するとともに、このプロジェクトに賛同、協力する動きが出てきている。
JR四国は、今年3月、高松駅に「さぬき高松うどん駅」という愛称をつけた。これは県との観光パートナーシップ協定に基づくもので、2年間この愛称を使用する。このほか、JR瀬戸大橋線では、うどん県副知事の要潤さんの写真でラッピングされたマリンライナーを、来年3月までの予定で運行している。

ラッピングされたマリンライナー

ラッピングされたマリンライナー

 高松港から岡山の宇野港を結ぶ宇高航路を運行する国道フェリーでは、これまで使用してきた「宇高国道フェリー」の愛称を「宇高うどんフェリー」に変え、あわせてロゴマークのデザインも変更した。また、宇野港と高松港のフェリー乗降口には、それぞれ「うどん県へいってらっしゃい」「うどん県に、ようこそ」と書かれた横断幕が設置され、うどん県への来訪ムードを盛り上げてくれる。
高松港のフェリー乗降口に設置された横断幕

高松港のフェリー乗降口に設置された横断幕

香川県内の有名うどん店や観光スポットを巡る琴参バスの定期観光バスには、うどん県プロジェクトをPRするラッピングバスが導入された。3つのコースがある定期観光バスの予備車両として活用するほか、貸切ツアーバスとしても活躍する。このバスを東京都内で走らせた際は、街行く人が振り返ったり、携帯電話で写真を撮ったりと、多くの人々の注目を集め、広告塔としての効果は抜群だったそうだ。

うどん県ラッピングバス

うどん県ラッピングバス

高松空港では、手荷物受取所のベルトコンベヤーに特大のうどん鉢が登場し、手荷物とともに回転している。
陸・海・空のそれぞれの交通機関、ターミナルが、うどん県プロジェクトを盛り上げている。

高松空港の手荷物受取所で回る特大うどん鉢

高松空港の手荷物受取所で回る特大うどん鉢

入手困難だった「うどん県バッジ」

うどん県バッジ うどん県への改名、うどん県宛ての年賀状に続く、うどん県プロジェクト企画として、うどん県副知事がスーツにつけていたうどん県バッジが販売された。今年2月に第1弾が販売されたが、すぐに売り切れ、第2弾、第3弾もすぐに売り切れてしまった。5月中旬に第4弾のうどん県バッジが販売され、ようやく入手できる状態となったそうだ。

うどん県バッジは、観光客が買うケースが多いと思われるが、香川県に本社を置く企業の営業マンが、県外での営業活動での話題づくりに「うどん県バッジ」を使っているという話もあるとか。
また、綾川町にある、道の駅「滝宮」では、うどん県バッジをつけた来店客だけの特典を用意している。レストランでは、うどんの大を小の値段で提供するほか、喫茶コーナーでは500円以上の飲食でコーヒーを無料でサービス。売店では、人気のうどん入りアイスクリームをはじめとするアイスクリームをモナカタイプ(200円)で注文した際、金時のトッピングを無料で提供している。

うどん県に「骨付鳥市」誕生!?

昨年末、うどん県に「骨付鳥市」という聞きなれない市の名前が登場した。
これは、香川県丸亀市が取り組んでいる丸亀の名物グルメ「骨付鳥」を活用したPRプロジェクトの一環で、うどん県改名に便乗したパロディだ。
お笑いコンビ、ココリコの遠藤章造さんは骨付鳥好きを公言しており、丸亀市は、骨付鳥PR冊子「ほね☆マガ」第1号の表紙に遠藤章造さんを起用した。遠藤さんは、架空の地域政党、日本骨付鳥党の党首として、「骨付鳥市」への改名を政権公約に掲げるという設定のパロディで冊子の表紙を飾った。

骨付鳥PR冊子「ほね☆マガ」第1号の表紙と記事

骨付鳥PR冊子「ほね☆マガ」第1号の表紙と記事

丸亀市は骨付鳥を新たな観光資源としてPRしようと数年前から取り組んでおり、PR冊子だけでなく、動画やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)による情報発信、ゆるキャラ、PRソングの制作、おみやげ用のラーメンやスナック菓子の開発など、あらゆる手法を駆使しながら、骨付鳥の地域ブランド化に取り組んでいる。「全力鶏プロジェクト」と名付けられた丸亀市のPRプロジェクトは、うどん県のそれだけじゃない魅力を、全力で発信し続けている。

「それだけじゃない香川県」に期待

うどん県プロジェクトはこれからも「瀬戸内海」「食」「アート」というテーマを軸に香川の魅力を発信していく。ちょうど来年は、一昨年、多くの来場者でにぎわった瀬戸内国際芸術祭の2回目が開催される。うどんとアート、そして瀬戸内海をどのように組み合わせてPRしていくのか、今後の取り組みが楽しみである。
香川県のこうした取り組みに、地元の自治体や企業などが応援、便乗する動きがより多く出てくれば、さぬきうどんのように、コシの強さを売りにした、太く、長く、バラエティに富んだ活動になるだろう。
「うどん県。それだけじゃない香川県」の今後の取り組みに期待したい。

(石川 良二)

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