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愛媛の登録有形文化財

越智家住宅(西条市)

2011.07.01 愛媛の登録有形文化財

「越智家住宅」は、今治市と西条市をつなぐ国道196号沿い、燧灘ひうちなだのほど近く、以前は大曲川を遡って船を着けることのできた位置にある。越智家住宅を構成する店舗兼居宅・茶室・数奇屋すきやが有形文化財に登録された。
 越智家は、明治期から「枡屋ますや」という屋号で木蝋もくろうの販売を行っていた。その後、大阪から仕入れた肥料や農薬を、周桑地域一帯に販売して生計を立て、当時は地域一番の豪商と言われるまでになっていた。
 住宅は、港から延びる道路に面して、店舗兼居宅としての母屋があり、奥行きの深い敷地には風情のある庭と「樟蔭しょういん」と名付けられた茶室がある。さらにその奥には隠居所の数奇屋がある。
 母屋は、江戸末期に建築されたもので、店舗部分は木造2階建、居住部分は平屋建で、建築面積は346m2ある。職場と住居の機能を兼ね備えた造りで、店舗部分は通り土間に面して帳場などがあり、今も艶々とした大黒柱が目に入る。奥には大切な客人をもてなす応接間があ り、和風な全景とは異なった洋風の造りになっている。母屋の南部分には、家族の住居のほか炊事場、洗い場、使用人の部屋などがある。
 往時には家族や使用人など合わせて10人程度がともに生活をした空間であり、賑わいが目に浮かぶようである。

画像:店舗部分の通り土間

店舗部分の通り土間

母屋から奥に進むと、色彩あふれる立派な庭園と木陰にたたずむ小さな茶室がある。1927(昭和2)年に建てられた本格的な茶室は今治の吉田工務店が設計施工を行ったもので、時代を感じる巧みな造りになっている。
 広大な敷地の最も奥に位置する数奇屋は、隠居所として造られたもので、木造建築のお手本のような職人技が随所にみられる。茶室と同時期に建てられ、「普請道楽」という言葉が彷彿とされる主の家普請への思いや、棟梁の心意気が建物のそこかしこに表れている。文化財にふさわしい建築である。

例をあげると、座敷天井には笹杢ささもくの杉の赤目材、脱衣所の天井に使った煤竹すすだけ・なぐり仕上げの棹縁さおぶち、居間には猫間障子…当時の職人技術の粋をこらした造りとなっている。
 隠居所の造りは大きく、建築面積は248m2、接客用の座敷もあり、句会や茶会なども催され、「枡屋に招かれることが地域の名士として認められること」と言われていたそうだ。越智家住宅は、職住一体となった、豪商の住まいの典型例とも言える造りになっており、当時の商人の生活を思い起こさせる貴重な文化財である。

(辻井 勇二)

参考資料
愛媛県の近代和風建築-近代和風建築総合調査
報告書-(愛媛県教育委員会)

犬伏武彦EYE

1927(昭和2)年に建築された越智家住宅隠居所は「木造建築の教科書」と言えるほど、そこかしこに選び抜かれた木材、知恵をめぐらした細工に目をとられる。普請を任された棟梁、吉田吉之助の姿が浮かんでくるようだが、建築された時代も見えてくる。
 このような建物を生み出した壬生川は、道前平野の玄関として栄えていた。商店の建ち並ぶ本河原通は、堀川の港に通じる物資の集散地として栄え、賑わっていた。
 越智家住宅の価値は、壬生川の歴史を思い起こさせる貴重な文化財であるとともに、地域が持つ力や個性を失うことのないように…、と建物が語りかけていることであると思う。

(松山東雲短期大学生活科学科生活デザイン専攻特任教授)

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