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西日本レポート

【兵庫県西宮市】歴史・文化・食の資源と新たな集客施設を活かす ~都市型観光振興を進める西宮市~

2008.12.01 西日本レポート

歴史・文化・食の資源と新たな集客施設を活かす ~都市型観光振興を進める西宮市~

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大阪・神戸の中間に位置する兵庫県西宮市は、文教・住宅都市として発展を続けてきた。最近では、歴史・文化・食などの資源を活用した観光振興に取り組んでいる。大規模商業・集客施設のオープンも相次ぎ、変貌を遂げる西宮市について紹介する。

阪神間の中核都市として発展

西宮市は、人口約48万人。北は六甲山系、南 は瀬戸内海に面し、豊かな自然に恵まれている。その一方で、交通が便利なことや10の大学をはじめ教育施設が数多いことから文教・住宅都市、そして阪神間の中核都市として発展してきた。
今年4月には、中核市に移行。市民サービスのさらなる充実が期待され、さらに魅力あるまちづくり、住みやすいまちづくりが推進されている。

観光のまち 西宮

西宮は、歴史・文化や食に関する地域資源が 豊富なことや、交通の利便性が高いことから、観光客も多い。2006年度の観光入込み客数は、1,193万人である。
“えべっさん”で知られる西宮神社や「日本書紀」にも登場する広田神社、厄除大祭でにぎわう門戸厄神など、歴史ある神社仏閣があり、明治から昭和初期に建てられた歴史的建造物も多く残っている。
プロ野球「阪神タイガース」の本拠地、阪神甲子園球場も西宮にあり、年間450万人が訪れている。
最近では、2005年に兵庫県芸術文化センターがオープンし、観劇やコンベンション関係の入込み客が増加しているようだ。

日本一の酒どころ

「灘の生一本」で知られる灘の酒づくり。全国屈指の酒どころとして知られる灘五郷のうち、西宮には西宮郷と今津郷がある。六甲山系の良質な伏流水が西宮に湧き出たことで「宮水」と呼ばれ、出来上 がった酒は、評価も高い。かつて江戸時代には、上方から江戸へ送り、「下り酒」と呼ばれ、非常に人気があったと言われている。かつては、約30の酒蔵が あったものの、消費者の日本酒離れや阪神淡路大震災による被害で廃業や縮小を余儀なくされた。しかし、今もなお、13の蔵元が西宮で酒づくりを続けてい る。
蔵元の集中する市内南部には、宮水の井戸場があり、「宮水発祥の地」や各蔵元の井戸群が整然と並んでいる。また、西宮郷と今津郷を結ぶ「酒 蔵通り」周辺では、明治時代に建てられた酒蔵や蔵元の住居の一部が博物館やショップに改装されている。そこでは、酒づくりの歴史や工程の見学や、各蔵元の 地酒の購入ができるようになっている。

市内南部にある「宮水発祥の地」

市内南部にある「宮水発祥の地」

酒ぐらルネサンス事業

西宮には、日本酒関連以外にもアサヒビール や伊藤ハムなどの大手企業が立地し、飲食料品製造業が盛んである。
こうした企業や行政などが中心となって、清 酒文化と食産業の再生・振興と「西宮ブランド」の構築を図ることを目的に、「西宮酒ぐらルネサンスと食フェア」が開催されている。今年で12回目を迎え、 毎年秋の2日間、「新酒番船パレード」や姉妹都市であるフランスや中国の各都市の酒を味わう「酒ワールドカップ」や、大道芸、スタンプラリーなどが催さ れ、今年は8万人の集客があった。メイン会場が西宮神社の境内というのも大きな特徴で、地域一丸となってにぎわいづくりに努めている。

ケーキ工房のあるまち 西宮

西宮市は、洋菓子の振興を観光事業の1つとして捉えている。西宮市内には、工房型のケーキ店が約60店もあるとされる。この「ケーキ工房のあるまち西宮」を知ってもらうため、「西宮スイーツ都市宣言」を打ち出し、2000年から「西宮洋菓子 園遊会」が開催されている。若手パティシエの作品披露や各店のケーキ試食などが行われ、毎回、定員を大きく上回る応募があるなど、大人気のイベントに成長した。

和菓子も負けていない

西宮神社の門前町として発展した歴史から、 市内には和菓子店も多い。2003年からは、「西宮和菓子まつり」を開催し、創作菓子・工芸菓子の展示や子ども向けの和菓子づくりの体験が行われている。

食をテーマにしたイベントを開催

食をテーマにしたイベントを開催

阪急西宮ガーデンズオープン

去る11月26日、西宮に新たな集客施設がオープンした。西宮北口駅南東地区の商業施設、「阪急西宮ガーデンズ」である。
西宮北口駅とデッキで直結しており、敷地面積約70,000m2、延床面積247,000m2は、ショッピングセンターとしては、西日本最大を誇っている。店舗数も268で西日本最大、百貨店やシネマコンプレックス、総合スーパーをはじめ、幅広い世代の様々なニーズに応えられる店舗構成となっている。
施設コンセプトは、「阪神間の豊かな自然環境との調和」で、ネーミングにも反映している。屋上の「スカイガーデン」には、果樹園や噴水、緑の丘などを配し、西宮市の花でもある「桜」も植樹されている。駐車場の壁面も緑化され、至るところに植栽や自然光を取り入れた空間が設けられている。

かつてのメモリアルコーナー

阪急、西宮北口、ここはかつてのプロ野球「阪急ブレーブス」の本拠地、阪急西宮スタジアム(旧阪急西宮球場)跡地である。西宮ガーデンズには、この地で積み重ねられた阪急電鉄の事業や文化を紹介する「阪急西宮ギャラリー」が設けられている。
ギャラリーには、阪急ブレーブスや同球場で開催されたアメリカンフットボールにまつわる品々が展示されている。また、ホームベースがあった位置には、モニュメントが配置されるほか、1984年まで西宮北口駅にあったダイヤモンドクロス等、1983年当時の様子を再現したジオラマも展示されている。
こうした展示が商業施設の中に設けられることは珍しく、「買い物だけでなく、思い出に残るような施設になって欲しい」との広報の方のお話が印象的であった。

※     阪急神戸本線と今津線が同駅で互いの線路を平面で交差する高速鉄道同士では非常に珍しい直角平面交差線路の通称

来春、「キッザニア甲子園」オープン

キッザニア甲子園鳥瞰図 資料提供:キッズシティジャパン

キッザニア甲子園鳥瞰図
資料提供:キッズシティジャパン

一方、阪神甲子園駅・阪神甲子園球場近くにある大型商業施設「ららぽーと甲子園」内には、来年3月にこども向け職業・社会体験施設「キッザニア甲子園」がオープン予定だ。
キッザニアは、1999年にメキシコで誕生し、施設内にはスポンサー企業の出展による銀行、飛行機、飲食店などのパビリオンが立ち並び、こどもサイズのリアルな街並みを形成している。様々な体験を通じて、未来の社会を担うこども達が楽しみながら学ぶエデュテインメントタウンを目指している。

※     エデュケーション(学び)+エンターテインメント(楽しさ)

「キッザニア甲子園」は、日本では2006年の「キッザニア東京」に次いで2番目。東京にはない大学、大使館、ホテル、ナレーションスタジオ、寿司屋、発掘現場などのほか、世界初の「電車パビリオン」の出展も予定されている。
東京と同じスケールで展開されるが、建物は別棟として建設される。こども向け施設のため、大きさが約3分の2とのことだが、上層階の天井は空をイメージした開放感ある構造になるようだ。来年3月のオープンに向け、急ピッチで工事が進められている。
「キッザニア東京」は、オープン以来、約1年半で140万人を超える来場者があったようだが、「キッザニア甲子園」にもオープン前から期待は大きく、既に四国方面から修学旅行の問い合わせがあると言う。

回遊型観光を目指して

西宮では、「阪急西宮ガーデンズ」や「キッ ザニア甲子園」などの大規模集客施設のオープンにより、今後市外からの来訪者が大幅に増加することが見込まれている。しかし、宿泊施設が少ないことに加え、交通網が発達しているため、従来から、県外からの観光客でも日帰りが中心であった。
このため、市や商工会議所では、西宮を訪れる人に、より長く市内に滞在し、市内全体を回遊・滞留してもらうための仕掛けづくりに取り組んでいる。観光ガイ ドマップの作成やウォーキングコースの設定、観光ボランティアガイド の育成、ループバスの運行などが始まった。前述の日本酒や和・洋菓子など、食をテーマにしたイベントも一過性に終わらせず、関連産業を含めた観光振興につ ながるように取り組んでいる。一部では、市内にある大学・学生と連携した地域資源の発掘や地域活性化策も進められているようだ。
また、西宮市と西宮商工会議所が連携し、地域ポータルサイト「西宮流(スタイル)」を開設、住民・観光客双方に役立つ情報を提供している。具体的には、西宮の環境・文化・歴史・人材などの最新情報、地元密着の情報がインターネット上に集約され、発信されている。
2009年度には、兵庫県とJR、観光関係者による「あいたい兵庫デスティネーションキャンペーン」が企画されており、より魅力ある観光地づくりと観光客の増加が期待される。

ポータルサイト「西宮流(スタイル)」

ポータルサイト「西宮流(スタイル)」

優れた資源を十二分に活かす

豊かな自然、環境、そして新旧の優れた資源 を持つ西宮市。この環境や資源を最大限に活用し、西宮で学ぶ人、住む人、そして訪れる人にとってさらに魅力あるまちに発展することを期待したい。

(新藤 博之)

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