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西日本レポート

【広島県広島市】日本一の路面電車の街“広島” ~利便性を高めてまちづくりに生かす~

2007.04.01 西日本レポート

日本一の路面電車の街“広島”

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最近、人と環境にやさしい交通手段として、路面電車が見直されてきている。富山では「富山ライトレール」が、旧JR富山港線を路面電車化して昨年4月に開業した。京都市や宇都宮市、堺市などでは新設や延長の計画が検討されている。

日本の路面電車

日本の路面電車

現在、日本では19事業者が18都市で、路面電車を運行している(軌道法に基づいて運行さ れているものを路面電車とする)。その中でも、広島は路面電車の営業キロが19.0kmと長いこと、輸送密度(1キロ当たりの1日平均旅客輸送人員)が1 万5千人を超え日本の路面電車で3本の指に入ること、鉄道線である広電西広島-広電宮島口間と直通運行が行われていること、さらには被爆電車から最新のグ リーンムーバーマックスまで多彩な電車が運行されていることなどから、「日本一の路面電車の街」と言われている。

利用者数は減少に歯止め

広島電鉄株式会社(以下広島電鉄とする)の路面電車輸送人員は、各地と同様にモータリゼー ションの進展により、昭和41年度の5,372万人をピークに昭和46年度には4,213万人まで減少した。しかし、昭和46年に軌道内諸車乗入れ禁止が 実施されたことにより定時性を確保、平成6年度には4,565万人まで回復した。その後は、バブル崩壊による景気低迷により利用者は減少傾向となったもの の、交通結節点の改善、および運行系統の新設による都心部へのアクセス性向上により、現在では減少に歯止めがかかった状況となっている。

路面電車に最適の街のサイズ

広島市は、直径5km圏内にほぼ60万人が居住する、人口密集度の高い街である。このよ うな街の特性が、交通手段としての路面電車に適しているとされており、海外でも同じように市中心部に人口が密集しているフランス・ストラスブール市やドイ ツ・ハノーバー市などでは、路面電車が活躍している。

広島電鉄路線図

広島電鉄路線図

最新式車両の導入

路面電車を運行する広島電鉄は、最新式の超低床車両グリーンムーバーマックスを平成17年 より導入。今年度は3編成を導入し20年3月末には10編成となる予定である。同社では、平成11年よりバリアフリーに対応したドイツ製のグリーンムー バーを導入していた。しかし、メンテナンスに手間・費用がかかることから、国産車両の導入を検討、国内メーカーにより共同開発されたグリーンムーバーマッ クスを導入した。

グリーンムーバーマックス

グリーンムーバーマックス

グリーンムーバーマックスはバリアフリー対応として、さまざまな配慮が行われた車両であ る。床高は330mmと低く、電停の高さとほぼフラットになっており、車椅子で楽に乗り降りできる。また、通路を広くとり、車椅子を動かすことができるほ か、手すりの色をよく目立つ黄色にしたり、つり革のもち手を三角形にして利用しやすくしたりしている。
もちろん、車内の快適性にも十分に配慮がなされており、照明は柔らかな色合いのダウンライトとしているほか、すわり心地のよいシートを装備するなどしている。

グリーンムーバーマックスの車内

グリーンムーバーマックスの車内

シームレスネットワーク化

広島電鉄では、昭和37年1月より、鉄道線である宮島線と、軌道線である市内電車の西広島 駅での乗り換えの不便さを解消するために、直通電車の運行を開始している。その後も直通電車の輸送力増強に努め、現在では、広電宮島口-広島駅間の路線は 終日直通運行している。このように、鉄道線と軌道線をシームレス(乗り換えなし)で結んでおり、利便性の高い交通機関と言えるだろう。

広電西広島駅

広電西広島駅

多彩な電車

広島電鉄は、通称「被爆電車」と言われる被爆した電車や、路面電車を廃止した大阪市、神戸 市、京都市、北九州市からの移籍車両を運行しており、「動く電車の博物館」という異名で全国的に有名だ。そのほかにも、ドイツ・ドルトムント市より購入し たものや、姉妹都市であるドイツ・ハノーバー市より友好の証として寄贈された車両などもあり、現在では25種類に及 んでいる。

さまざまな種類の電車が並ぶ広島電鉄の車庫

さまざまな種類の電車が並ぶ広島電鉄の車庫

交通結節点事業

交通結節点となる、JR、船などとの乗換駅の整備も進んでいる。
JRとの乗換駅 である横川駅電停では、横川駅前広場の整備に合わせて、電停を駅前広場内に移設し、JRとの乗り換えがスムーズにできるようにした。併せて、市中心部(広 電本社前)とを結ぶ路線を新設することにより、同電停での利用客数は1日平均2,000人増加した。利便性が高まることにより、路面電車だけではなく、 JRの利用客も増加するなど、大きな効果があった。

そのほか、西広島駅、広島港電停でも改修が行われている。

広島市の交通ビジョン

広島市では、「ひと・環境にやさしく、活力ある広島の交通体系をめざして」という交通政策の理念を掲げている。これは、自動車に過度に依存した交通体系を見直し、道路と公共交通の持つそれぞれの役割を考慮しつつ、交通体系の軸足を公共交通にシフトしていくものである。
基本的には、市中心部から通過交通を排除するとともに、中心部での路面電車などの公共交通機関の利用を促すものである。

広島市の交通ビジョンにおける、市内中心部での路面電車の役割(交通の視点)のイメージ

広島市の交通ビジョンにおける、市内中心部での路面電車の役割(交通の視点)のイメージ

路面電車に関連する施策には、『公共交通の「生活インフラ」としての充実・強化』や、『「行きよい」都心づくりのための交通』がある。
その中の主な取組としては、路面電車の機能強化(LRVの導入、電停改良)や、路面電車のルート短縮化や速達性向上策の検討が挙げられている。
LRV=ライト・レール・ビークル、低床式車両

改修後の電停

改修後の電停

官民挙げての取組

広島では、広島都市圏LRTプロジェクト推進協議会(広島電鉄、広島国道事務所、県、県警本部、広島市、廿日市市)が主体となって、路面電車のLRT化に向けた計画を策定、関係者が一丸となって取り組んでいる。
先に述べた、新型車両の導入や、交通結節点事業、電停の改修なども、官民が協力して行われている。例えば、新型車両の導入に国や県、市が補助金を出した り、電停の改修においては国道管理者である国道事務所が電停の幅や高さなどの改修を、広島電鉄が電停のその他の設備の改修を行ったりするなど、協議会で策 定された計画を、着実に実行し成果につなげている。
LRT=ライト・レール・トランジット 次世代路面電車システム

路面電車を活用して活力あるまちを

今後は都市部においても高齢化がさらに進み、それに伴って中心市街地居住も進むだろう。高齢者などの交通弱者にとって必要な交通機関は、自動車ではなく公共交通機関であり、その中でも路面電車は大きな役割を担うだろう。
路面電車には、定時制・速達性の確保など利便性を高めるとともに、バリアフリー化をさらに進めることが求められるだろう。また、輸送 力の増強も課題となるだろう。
路面電車のさまざまな課題を解決し、その利点を活用して、人や環境にやさしいまちづくりが行われ、中心市街地の活性化につながることを期待したい。

(池田 隆)

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