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愛媛の近代化産業遺産を訪ねて

明治末期の地域の繁栄を今に伝える本格的洋館 -八幡浜市保内町 旧白石和太郎洋館-(2005年11月)

2005.11.01 愛媛の近代化産業遺産を訪ねて

旧白石和太郎洋館 地図

シリーズ「愛媛の近代化産業遺産を訪ねて」3回目は、八幡浜市保内町にある旧白石和太郎洋館をご紹介します。

 

本格的な洋風の意匠

旧白石和太郎洋館は、当初白石紡績所の事務所として建てられたといわれている。建築年代は定かではないが、伝承や類似する建物との比較から、明治30年代と推測されている。外観は、玄関ポーチ、石積み風左官仕上げの1階の外壁に特徴がある。玄関や、窓の上部に施された装飾、窓上部の装飾を支える柱、窓台の装飾なども豪華であり、当時の技術の高さと、新しい建築様式を試行錯誤しつつ取り入れようとする姿勢がうかがえる。
 室内をみると、1階は近代的なオフィスの雰囲気を持っている。2階は小規模な個室に分かれ、住宅風となっている。1階にある暖炉や、壁面に造りつけた家具、天井中央の照明器具を吊るすための飾りなどが、華麗な雰囲気を醸し出し、当時の繁栄をしのばせるものとなっている。

洋館の内部(1階)

洋館の内部(1階)

 

鉱山業で富をなした白石和太郎

白石和太郎(2代目)は、1868(慶応4)年に川之石浦、白石和太郎の長男として生まれ、初め文太郎と称していたが、後に2代目和太郎を継いだ。
 和太郎は、宇和鉱業会社を設立し、当時の出荷量で別子鉱山に次ぐ四国第2の鉱山であった大峯鉱山(川之石字大峯)の経営を行った。また、宇和紡績を買い受け、白石紡績所として、紡績業の経営を行うなど、広く商工業の発展に貢献した。

大峯鉱山坑跡(写真:八幡浜市提供)

大峯鉱山坑跡(写真:八幡浜市提供)

一方で、川之石就学奨励会の中心メンバーとして、教育の振興についても非常に熱心に取り組み、小学校校舎新築に対しては、多額の寄付をするなど、大きな役割を果たした。

 

市指定有形文化財

旧白石和太郎洋館は、1950(昭和25)年から、1989(平成元)年まで、川之石ドレスメーカー女学院(のち専門学校)として使用され、地域の人々に『ドレメ』として親しまれた。その後1994(平成6)年に旧保内町により、保存活用のために購入された。
 2002(平成14)年には、町有形文化財に指定された。その後、八幡浜市との合併により、現在では市指定有形文化財となっている。
 2005(平成17)年8月には、事業費3千万円余りで、屋根の葺き替えや白蟻被害箇所の解体補修、便所棟の増設、管理棟の改修などが行われた。

改修に伴い保存された屋根瓦等が2階に展示されている

改修に伴い保存された屋根瓦等が2階に展示されている

八幡浜市としては、市指定有形文化財であるが、保存と活用を一体のものと捉え、市民の催しなどに積極的に利用されることで、「むかし」と「いま」、人と人が出会い、新たな文化の創造・発信の場となることを期待している。これまで、洋館内部を積極的に公開するとともに、地元の人々の集会や、フォークギターのミニコンサート、絵画展等に利用されたり、ウォークラリーなどの催しや見学者の来館の際には地元団体が喫茶店を開くなど、もてなしと交流の場にもなっている。見学するだけではなくて利用することによって、当時の繁栄に思いをはせるとともに、今後の「まちづくり」と住民の一体感の醸成に役立つことを期待したい。

(池田 隆)

【参考文献】
『愛媛温故紀行』  編集発行 財団法人えひめ地域政策研究センター(2003年)
『改定版 保内町誌』 編集 保内町誌編纂委員会 発行 保内町(1999年)

見学・利用の申し込みは

八幡浜市保内町宮内1番耕地260番地 八幡浜市教育委員会文化振興課
TEL:0894-22-3111 まで

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