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西日本レポート

【四国各県】映像で地域の魅力を引き出したい -四国各県のフィルム・コミッションの活動-

2005.10.01 西日本レポート

映像で地域の魅力を引き出したい -四国各県のフィルム・コミッションの活動-

全国でフィルム・コミッション(以下FC)の設立が相次いでいる。2000年に日本初のFCが大阪に設立されて以来、その数は急増し、今年9月時点で80団体(*)にのぼっている。
四国でも、4県全てにFCが誕生し、それぞれが着実に実績を重ねつつある。その活動ぶりを紹介したい。
(*)全国フィルム・コミッション連絡協議会(事務局:国際観光振興会)加盟団体数

フィルム・コミッションとは

映画やテレビ番組、コマーシャルなどの映像をスタジオ以外の場所でロケーション撮影する 際、ロケに適した場所探しに始まり、実際の撮影に際しては警察への道路使用許可申請や土地所有者との折衝、エキストラ募集、スタッフの宿泊場所や食事の手 配に至るまで、さまざまな作業が必要となる。ロケーション撮影をスムーズに行うための、地元でのこうした作業をサポートするのがFCの役割である。
日本のFCは非営利の公的機関がほとんどで、地方自治体や観光協会、商工会議所などが母体となっているところが多い。ロケを積極的に受け入れることで地元 への経済波及効果や観光資源としての活用等を狙ったものである。無料で地域でのサポートを受けられるとあって、映像関係者の間でも、FCの認知度・利用度 は高まっている。

四国のフィルム・コミッションの活動状況

~インパクト大きい「セカチュー」 香川県~

四国で最も早くFCを設立したのは香川県で、01年4月に香川県観光協会内に事務局を置き、活動を開始した。
香川でのFC設立は、小説007シリーズの作者が直島にシナリオ・ハンティングに来るに際し、受け入れ組織が必要だったことが契機となっている。設立当初 はFCという組織自体の認知度が低く、呼び水として助成制度も設けていた。具体的には香川を舞台とした映画や大河ドラマなどのロケハン(*)に対して、1人当たり3~5万円で3~5人まで旅費の補助をするというものだった。現在は全国でFCへの認知度が高まっているため、助成制度をアピールしなくても頻繁に問い合わせや実際のロケハンが来ている。
(*)ロケーション・ハンティング。事前にロケに適した場所を探すこと。

香川フィルムコミッションの知名度を上げたのが、大ヒット映画「世界の中心で、愛をさけぶ」である。03年に撮影、04年5月から劇場公開され、その後の ロケ地詣でのカップルの増加は、いろいろなメディアで取り上げられている。映画の最も重要かつ印象的な部分の撮影が行われた庵治(あじ)町によると、昨年 5月の映画公開から今年4月までの1年間に同町のロケ地を訪れた人は推計52,650人。同町全体の入込み客数は03年が88,844人だったのに対し、 04年は132,771人と、50%近く伸びた。お盆休みの時期にこの取材で同町を訪れたところ、町の方が「公開前はほとんど目にすることがなかった」と いう県外ナンバーの車が、行く先々で目に付いた。有名なロケのスポットでは、若いカップルや家族連れが思い思いに散歩したり写真撮影したりしている。公開 から1年以上経っているというのに、根強いこの作品の影響力に驚く。どこにでもある小さな町の風景が、映画のスクリーン上に切り取られ、物語が付け加えら れることで、それが特別な風景に変わる不思議さを感じた。
その後も香川フィルムコミッションの支援作品は、映画4本を含め順調に増えている。この秋公開となる映画2本のうち1本は県出身監督によるオール香川ロケ作品、もう一本は「セカチュー」の行定勲監督作品ということで、いずれも注目度は高い。

名称香川フィルムコミッション
設立2001.4.1
母体(社)香川県観光協会
スタッフ2名(他業務との兼任)
年間予算約500万円
誘致実績映画 9、TVドラマ 8、その他 62
サクとアキになりきってロケ地巡りを楽しむ人々

サクとアキになりきってロケ地巡りを楽しむ人々

~誘致映画に県が出資 徳島県~

徳島では民間の活動が先行していた。地元テレビ司会等で活躍していた梅津龍太郎氏を中心 に組織された徳島フィルムコミッションは、1991年「男はつらいよ」シリーズの撮影を徳島に呼ぼうという活動から始まった。02年からはNPO法人とし てFCの活動を行っている。徳島フィルムコミッションが誘致した映画「村の写真集」(03年11月撮影)は、上海国際映画祭で最優秀作品賞と最優秀男優賞 を受賞するなど、輝かしい実績を持っている。
また、徳島青年会議所では、徳島の魅力をアピールするCMを公募し優秀作品を審査する「徳島テレビ祭」というイベントを03年まで行っており、映像関係者とのコネクションも強かったようだ。
そのような中で、県としても映像が情報発信の有力なツールであることの認識も高く、02年6月、県の観光交流課に徳島県ロケーション・サービスが設置された。
これまでに支援したロケはCMや写真集なども含め60件を超える。旅番組が多く、鳴門の渦潮やうだつの町並みなどお馴染みの場所で撮影が行われている。
今年度は、やはり鳴門を舞台に、映画が撮影される。ストーリーは第一次世界大戦時、徳島の板東俘虜収容所に収容されたドイツ人俘虜と、地域の人々との交流 を描いたもので、4ヵ月弱をかけて俘虜収容所のオープンセットを建設中である。撮影終了後もこのセットは残され、観光施設として活用していく計画で、徳島 県も約9,000万円の資金を提供している。徳島県ロケーション・サービスも地域との交流を図り参加意識を高めるイベント等を行う。「県民の映画」との位 置付けのもと、通常のFCの活動にとどまらず、県や観光関係者などを挙げてのバックアップ体制が取られる。

名称徳島県ロケーション・サービス
設立2002.6.1
母体徳島県観光交流課
スタッフ兼任3名
今年度予算400万円
支援実績映画 2、TVドラマ 10、その他 52

~後発ながら海外作品にも着手 高知県~

高知フィルムコミッションは四国では最も若く、昨年11月にできたばかり。よってFCと しての実績は少ないが、母体である高知県観光コンベンション協会では、それまでにもロケ支援を行った経験があり、ノウハウの蓄積はあった。しかし映画関係 者から「FCがあるのとないのとでは、制作側が受ける印象がまったく違う」という話を聞き、FCを立ち上げた。全国でFCが設立され、地方ロケに際し制作 者側がまずはFCに協力要請をする、という流れができてきたということなのだろう。もはやFCのないところは受け入れ窓口がないと判断されかねない。
目下、高知フィルムコミッションの最大のミッションは韓国映画「SWEET DREAM」の撮影を成功させることである。高知を舞台にしたアニメ映画「海がきこえる」を見て、ぜひ高知で映画を撮りたいと思った韓国人監督からのオファーによってロケが実現した。
日本の撮影手法との違い(ストーリーや撮影場所がその場でどんどん変わる)や、言葉の問題など、受け入れ側にとっては不安材料も多い。しかし、韓流ブーム といわれるなか、ヒットすればその波及効果は計り知れない。国内の韓流ファンはもとより、韓国からも観光客を引き寄せられるかもしれない。そうなれば、韓 国との直行便がある松山と高松の空港の利用が増えることも期待できるのではないか(捕らぬ狸だが・・・)。四国全体の観光活性化のためにも、ぜひとも成功 してもらいたいものだ。

名称高知フィルムコミッション
設立2004.11.1
母体(財)高知県観光コンベンション協会
スタッフ兼任5名(うちメインスタッフ3名)
年間予算680万円
支援実績映画 3、TVドラマ 0、その他 19

~官民一体の活動で注目される愛媛方式~

さて、愛媛県では、県の観光交流課に事務局を置くえひめフィルム・コミッションと、 NPO法人アジア・フィルム・ネットワーク(AFN)が互いに役割を補完し合いながら活動している。愛媛でのFC設立は、現在えひめフィルム・コミッショ ンの専任担当者として活動している泉谷昇氏の存在なくしては語れない。県にFC設立を申し入れたのも泉谷氏自身であり、当初から県とNPOの2本立てとい う方式を提唱していた。受け入れの窓口は県で一本化し、許認可申請や市町村とのやりとりなど、自治体が得意とする分野を行うが、宿泊や食事場所の紹介等、 公平を期す行政として立ち入りにくい部分などはAFNが行っている。
設立当初はノウハウもなく、メジャー映画会社に飛び込み営業をして回ったら しいが、大きな転機は「世界の中心で、愛をさけぶ」であったという。愛媛での撮影は香川に比べ少ないが、国道を一時通行止めにしたり、路面電車の車両を借 り切ったりと、「ここまでできるのか」と制作者側に印象付けることができたようだ。FCにとっても代表作といえる作品がひとつできると、制作会社への売り 込み時にもアピールしやすいし、噂を聞いて「こんなロケをしたいんだが」と制作者側から相談してくるケースも増えてくる。

名称えひめフィルム・コミッション
設立2002.7.1
母体愛媛県観光交流課
スタッフ専任1名、兼任2名
年間予算700万円
支援実績映画 6、TVドラマ 7、その他 8

地域は活性化するのか?

映画等のロケが行われることによって、どのような経済効果が期待できるのだろう。えひめ フィルム・コミッションが支援した最新作はテレビドラマ「がんばっていきまっしょい」で、5月から9月までの撮影期間中、今治市大三島町や松山市で約70 日間に渡ってロケが行われた。約45名のスタッフが70日の滞在期間中、宿泊費、食費その他で1日1万円消費したとすると、約3千万円が地元にもたらされ たことになる。さらにロケハンやセット(艇庫)の建設等で、撮影前にもスタッフは訪れているので、実際はそれを上回るかもしれない。
ちなみに、 このドラマの象徴的建物となった艇庫のセットが撮影後どうなるか、9月末時点では決まっていない。建築基準法上、現状のままでは使用することができず、保 存するにも移設が必要となる。単にセットが残っているというだけでは、観光資源にはなりにくいであろうが、個人的にはなんらかの形で有効活用が図られれば いいのだが、と思う。
撮影時の直接的経済効果に加え、例えば撮影に協力した企業が画面に映し出される、あるいは名前がクレジットに記されると いったことによる広告宣伝効果や、視聴者が実際にロケ地を訪れることによって生じる経済効果も期待できる。多くの自治体がFCを立ち上げロケ誘致合戦を繰 り広げているのは、観光資源化や地域の知名度アップ、イメージアップを期待してのことだろう。
だが、実際には「セカチュー」における庵治町のよ うな例は、例外中の例外と考えた方がいいのではないか。その庵治町にしても、確かに観光客は増えているものの、マイカーでやって来てパシャパシャと写真を 撮って帰っていく人達が、町の経済に貢献しているかといえば疑問符がつく(ただ庵治町の場合、下手に観光地化されると、逆に作品のイメージが損なわれ魅力 を失う危険があるのも確か)。
ロケ誘致が観光客増加に直結しなくても、地域住民が地元の魅力を再発見したり、わが町に誇りを持つきっかけになったりするだけでも、充分に地域活性化といえるのではないか。
AFNでは、子供だけの力で映像作品を作る「こども映画塾」という事業を数年前から実施している。映像への興味を持ち、映像作りに触れた子供たちの中か ら、未来の映画監督が生まれるかもしれない。そして故郷の風景の中で作品を作りたいと思うかもしれない。考えてみれば、映像文化そのものの発展なくして、 FCの活動にも広がりはないのである。

(上甲いづみ)

「がんばっていきまっしょい」の効果やいかに?

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