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業界調査報告書

「選ばれ競争の時代」を迎えた愛媛の医療業界 ~県内中小病院の現状と今後の経営戦略~

2005.03.01 業界調査報告書

株式会社いよぎん地域経済研究センター(略称IRC、社長 中越 眞)では、このたび、県内業界調査シリーズとしては第9弾となる業界調査報告書「『選ばれ競争の時代』を迎えた愛媛の医療業界~県内中小病院の現状と今後の経営戦略~」を取りまとめましたのでお知らせいたします。

1.調査の目的

愛媛の医療業界のこれまでの歴史や特徴、また、業界を取り巻く環境変化の中での県内中小病院の経営戦略等を明らかにすること。

2.報告書の概要

  • 愛媛の医療業界は、「戦前期」「戦後復興期」を経た後、1961年の国民皆保険制度のスタートにより、全国と同様に「量的拡大期」を迎え、近代的な医療サービスの提供体制が順次確立し目覚ましい発展を遂げた。その後、経済の成熟化と軌を一にし、1985年の第1次医療法改正を機に「質的充実期」に転換し、現在に至っている。
  • 愛媛の医療業界の市場規模(県民医療費)は、1999年度で4,256億円に上り、他産業と比較しても非常に大きく、県民1人当たり医療費は全国11位と高水準である。また医療施設数は2003年10月1日現在、病院153施設、診療所1,207施設となっている。愛媛の特徴は、(1)人口当たりの医療施設数・病床数・医師数・看護師数、(2)中小病院の割合、(3)有床診療所の割合、が各々全国平均を上回っている点である。
  • 2001~2003年度における県内中小病院25施設の経営状況をみると、診療報酬のマイナス改定などの影響を介護・福祉分野の拡充等でカバーし、全体では2期連続の増収増益となっている。県内医療機関の倒産率が極めて低いことなどと併せて考えると、県内の病院の経営状況はまずまず順調であるといえる。ただし、個別にみると経営格差はむしろ拡大傾向にある。
  • これまで医療業界は、その公共性の高さから手厚く保護されてきたが、最近では、国の財政悪化を背景とした医療費抑制の動きや国民の医療ニーズの高度化など、業界を取り巻く環境は大きく変化している。こうした環境変化に対し、自院の経営戦略を明確にして積極的に対応している県内医療機関も多い。そのキーワードは、(1)特定の科目や分野に特化する「専門特化」、(2)経営の柱を医療だけでなく介護・福祉にまで広げる「複合経営」、(3)各医療機関が連携して地域の医療を完結する「医療連携」、(4)ITを活用して業務の効率化やサービスの向上を目指す「情報化」、(5)医療の質の向上や職員の意識改革などを狙った「第三者評価の取得」、の5つである。中でも目立つのは「複合経営」の取り組みであり、県内医療機関における介護・福祉施設保有率は51.3%で全国上位(10位)にある。全国的にみても、県内医療機関はいち早く複合経営に取り組んでおり、介護保険制度導入を契機として介護・福祉分野への進出をさらに強めている。
  • 県民アンケートによれば、県内医療施設に対する総合評価で「満足(大変満足・まあ満足)」と答えた割合は約6割で、「どちらともいえない」が4割近くとなった。また医療施設に対して望むことでは、「患者の立場に立った親切な応対」や「病気・治療についての具体的な説明」が圧倒的に多く、患者に対する親身になった対応が求められている。
  • 2025年度までの県民医療費の長期シミュレーションでは、「現状型」は年平均1.4%の増加、「抑制型」では年平均0.7%の増加、となっており、過去の増加率をかなり下回る可能性が高い。今後は、医療機関といえども、これまでどおりのやり方では安定した経営を続けていくことは難しくなりそうだ。地域住民の支持を得て「選ばれ競争の時代」に勝ち残るためには、「医療はサービス業」であるという原点に立ち返り、患者満足度の向上を図ることはもちろん、今後予想される医療制度改革を絶えず先取りしながら、効率経営を実践していくことが求められる。

3.発行

(1)     発行部数     8,000冊
(2)     配付先     IRC会員、取材先、官公庁、関係諸団体など
その他ご希望の方には無料で配付します。

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