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西日本レポート

【高知県高知市】発泡スチロール処理に画期的なシステム登場 - オレンジオイル“リモネン”を用いた高知のリサイクルプラント -

2002.08.01 西日本レポート

発泡スチロール処理に画期的なシステム登場

発泡スチロールは、石油から作られるポリスチレンを原料とし、軽量で保温性に優れるなど の利点を持つ。このため、食品トレーや電器製品などの梱包用緩衝材ほか多方面で用いられている。食品トレー回収のためスーパーの店頭に回収ボックスが置か れるなど、食品トレーのリサイクルは消費者が参加するリサイクルの代表格ともなっている。このたび、オレンジオイルを用いた発泡スチロールの画期的なリサ イクルシステムが高知市で稼働、国内でも最大規模を誇る。今回は、この高知での取組みを紹介しよう。

地場スーパーが子会社設立

取組みの主体は、地場大手スーパー(株)サニーマートの100%出資子会社、(株)エコ ライフ土佐。リサイクル事業を通じた地域貢献を目的に2001年4月に設立された。同社では、親会社や他の量販店から出る食品用トレーをはじめ、卸売市場 の鮮魚トロ箱、電器店の梱包用緩衝材などを引取り、独自の技術を用いてリサイクルする事業を行っている。

リサイクル効率の悪い従来方式

従来の方式では、回収された使用済の発泡スチロールを加熱・溶解、ポリスチレン粒子に還 元した後、発泡スチロール原料として再度利用するか、別のプラスチック製品の原料としている。この方式では、加熱によるポリスチレンの劣化が避けられない うえ、純正原料を7割程度混ぜる必要があるなど、リサイクル効率は必ずしも良くない。

リモネンを用いたリサイクル方式の仕組み

(株)エコライフ土佐が採用したのは、電器製品の梱包用緩衝材の再利用方法を研究していた大手電器メーカーのソニー(株)が開発した最新のリサイクル技術である。
その秘密は、「リモネン」というオレンジオイルにある。リモネンは、オレンジを搾った後の滓(かす)から採れる天然油である。天然成分なので、もちろん無害である。

リモネンを利用した発泡スチロールリサイクルの仕組み (注)混合液の回収・運搬は計画中

リモネンを利用した発泡スチロールリサイクルの仕組み
(注)混合液の回収・運搬は計画中

2.5センチ角に砕かれた発泡スチロールにリモネン液をかけると、わずか30秒足らずで溶けてしまう。
この溶液は、次の工程でポリスチレンとリモネン液とに分離され、そのうちポリスチレンは粒状に固められ、再生ペレットとなる。こうしてできた再生品は純正品に劣らない品質を持つため、キャビネットや文房具などの原料として用いられ、再び消費者の手もとに届く。
リモネン液は99%が回収され、しかも繰り返し何度も利用することができるので経済的である。同社では、ブラジル産オレンジ滓汁からヤスハラケミカル (株)新居浜工場が精製したリモネン液を用いている。県内の農協からみかんを使えないか打診があったが、このプラントの場合、6,500万個以上の膨大な みかんが必要であるが、安定供給の目処が立たず、また原料投入設備を改良する必要もあるため、実現していない。

環境にも優しいリサイクル方式

加熱して溶かす従来の方式では、発泡スチロールを再生する際、純正原料を混ぜる必要があったが、リモネン方式では100%再生原料だけで新品同様のものができる。加熱も不要で、従来の方式よりもCO2排出量が30%、エネルギー消費量が20%削減できるため環境にも優しい。
発泡スチロールは軽い割にかさばるため、輸送効率をいかに上げるかが、リサイクルを進めるうえでの大きな課題の一つである。これに対処するため、巡回し、 その場で溶解・減容ができるよう小型の回収車もプラントメーカーにて開発されている。現在のところ、処理量が少ないため導入していないが、同社では回収車 方式を将来の目標としている。

大口発生源は卸売市場

発泡スチロールの大口発生源は水産物卸売市場だが、高知市では、従来、卸売市場で使用済 みとなった発泡スチロール製魚箱は、燃料として使われるか、埋立処分されるのが主であった。魚脂やその他の付着物があり、その除去がやっかいだからであ る。リモネン方式では、添加物を入れ、付着した脂等をこれに滲み込ませることによって容易に取り除くことができ、この問題もクリアーしている。

行政とも共同歩調

発泡スチロールのリサイクル率向上は、水産物卸売市場を持つ高知市としても改善すべき課 題であった。このため、高知市では同社のリサイクル事業を「エコタウン構想」の第一段として位置付け、用地確保や住民説明などの支援を行ってきた。しか し、周辺住民の同施設への理解が当初なかなか進まず、プラントは竣工したものの、8ヵ月間の稼動延期を余儀なくされた。しかしながら、その後10回以上に も及ぶ説明会を重ねることで今回の事業に対する地域の理解も深まり、稼働後は何の苦情も発生していないという。

処理量の確保が課題

0208-01 再生されたペレットはソニーを中心に設立した「ポリスチレン引取機構」が最低価格を保証のうえ、全量を引取ることになっており、販売先についての心配はない。
そうなると残る問題は発泡スチロールの量が確保できるかどうかであるが、今のところ、当初の目算通りにはなっていない。埋立に回したり、セメント会社に燃 料として引取ってもらう方が同社が計画していた処理料より安いことがわかったため、料金設定の見直しを迫られた。大口である卸売市場からの分は処理料を調 整し、やっと同社への持込みに漕ぎ着けたが、それでも稼働率は50%に止まっている。量販店からはサニーマート各店以外に持込みがなく、大手電器店からの 持込みも限られている。
また、操業開始後、白色以外のスチロールはリサイクル品に微妙に色が着くので、商品化しにくいなどの新たな問題も浮かび上がった。いったん受け入れたものは返品できず、白色以外のものは同社のプラントでは処理できないため、保管や処分にも苦慮しているようだ。

他県からも注目集まる

このようにいくつかの課題は抱えているものの、同社は2000年12月に四国で初めてエコタウン・ハード補助金(下記注)を受けた施設として、他県からも今後の運営に注目が集まっている。
発泡スチロールの処理量を確保し、稼働率を上げないと、償却費負担が重荷になる。逆に、多く集めることができれば、運営は楽になるとともに、より低廉な処理料金提示も可能となる。
今後、このシステムが全国に普及していくかどうかは、より多くの発泡スチロールが集まる仕組みを確立できるかどうかにかかっている。

(林 文彦)

エコタウン・ハード補助金(環境調和型地域振興施設整備費補助金)

地方公共団体が作成した推進計画にて承認されたエコタウン事業の補助対象となるリサイクル施設整備に対して、経済産業省より交付される。民間事業者の設備投資に対し、2分の1と補助率の高さが魅力である。

発泡スチロールリサイクルプラントの概要

事業主体(株)エコライフ土佐
代表者齋藤 和男
操業開始日2001年11月28日
所在地高知県仁井田新築4347番1
工業敷地面積2,475 平方メートル
処理能力300 kg/時間
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