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まちおこし

愛媛県内子町 宿泊者とのふれあいから、我がふるさとの良さを再認識!! -“町並み”保存に続き“村並み”保存を展開する内子町 -(2001年7月)

2001.07.01 まちおこし

 このシリーズは、愛媛県内各地の“まちづくり”の中心となって、ユニークな取り組みを展開している「人」と、その活動内容を紹介している。今回は、内子町の「石畳の宿」を取り上げた。

-昔ながらの農村風景が残る石畳地区-

 白壁の美しい江戸時代からの伝統的な町並みで知られる内子町。72年から同町中心部でスタートした“町並み”保存は大きな成果をあげている。その中心部から北西に約12km。肱川の支流である麓川に沿って山あいの道を進むと、そこは石畳地区。人口約400人の同地区は、四方を山に囲まれ、集落周辺には多くの棚田が広がるなど、昔ながらの農村風景が今も残っている。
 この地区には、内子町が農村地域で取り組んでいる“村並み”保存の一例、「石畳の宿」がある。この施設は、都会の人々に田舎暮らしを体験してもらおうと、内子町が築80年の古い民家を移築・改修し、94年にオープンさせたものである。

 

-“村並み”保存は“人づくり”から-

 内子町の“村並み”保存の仕掛人は、現在、町並み保存センターの所長を務めている岡田文淑さん。役場の企画調整課長として、“町並み”保存に情熱を注ぎ込んできた岡田さんは、同時に“村並み”保存にも目を向けた。
 岡田さんは、「農村地域のコミュニティーは崩壊しつつあります。このままでは、内子町の農村部は駄目になってしまうという危機感がありました。そこで、まずは地域を支える“人づくり”が大切だと考えたのです。自分たちの地域を誇りに思う人がいなければ、“地域づくり”はできません。」と力を込めて話す。
 “村並み”保存のシンボルである「石畳の宿」。この宿は、単なる宿泊施設ではない。「住民は、訪れる人々との会話を通じて、自分たちの地域について考える機会をもつことになります。すると、自分たちの地域の良さに気付くはずです。『石畳の宿』は住民が自分たちの地域を再認識し、自立していくための大いなる学習の場でもあるのです。」と、岡田さんは熱っぽく語る。

 

-石畳流の“もてなし”の心-

 古い農家のつくりをそのまま活かした「石畳の宿」は、道路端のさほど高くない石垣の上に建っている。中に入ると、一階は囲炉裏のある板間。二階には屋根裏を改修した客室が四つ。定員わずか12人の小ぢんまりとした宿である。
 宿の管理や食事の仕度などは、地元の9人の主婦が交替で行っている。そのうち、高橋美穂子さんと山本淳美さんに会うことができた。二人はあたたかみのある内子弁で「全国からお客さんが来られるンヨ。たまには外国の人までおいでるンヨ。」と語ってくれた。宿帳を見ると、全国各地の住所だけではなく、ヨーロッパや東南アジアなどの国名まであり、オープン時の期待以上の広がりをみせている交流がうかがえた。
 この宿の食事は、10年ほど前まで石畳地区の法事などに出されていた手料理をアレンジしたもので、すべて地元でとれた新鮮な食材である。囲炉裏の炭火で2時間もかけてじっくり焼いた「アメノウオ」と、採れたての「野草の天ぷら」が特に人気がある。「ここへおいでる方には、“ふるさと”にもどった気分になってもらいたいんです。だから、私らは石畳流の“もてなしの心”を一番大切にしとるンヨ。」少しばかり仕事の手を休め、二人はとても嬉しそうに語った。
 「石畳の宿」は、訪れる人をまるで帰省してきた家族のようにあたたかくもてなしてくれる。このため、リピーターが多く、口コミで評判が広がり、宿泊客は途切れることがない。

上:山本淳美さん(左)と高橋美穂子さん(右) 下:「石畳の宿」の建物

上:山本淳美さん(左)と高橋美穂子さん(右)
下:「石畳の宿」の建物

 

-宿を支える主婦、主婦を支える家族-

 「石畳の宿」を支える主婦は、山あいの小さな宿で全国の人々との貴重な出会いを体験している。「今まで何もないところと思いよったけど、お客さんに石畳地区のことを誉められると、自分たちの地域が今まで以上に誇りに思えるようになった。考え方が変わって、何にでも自信がもてるようになったンヨ。」高橋さんと山本さんは笑顔で語る。自分たちの暮らしや手料理などが喜んでもらえることでとても元気付けられ、小さな宿でのたくさんの出逢いに、大きな喜びを見出している。
 ところで、宿を支える主婦たちは、当然ながら家事や農業など家の仕事もたくさん抱えている。このため、主婦が家を空ける時はどうしても家族全員の協力が欠かせない。また、男性グループ「石畳を思う会」では、毎年「水車まつり」を開催するなど、我がふるさとを思う心は石畳地区に住むすべての人々を動かしている。
 我がふるさとの良さを、控え目ながらも嬉しそうに語る人々の笑顔がとても印象的であった。

(畠岡 宏一)

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