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まちおこし

愛媛県宮窪町 自分らの海で捕った魚は自分らで売らんか!! - 宮窪水産研究会の取り組み -(2001年5月)

2001.05.01 まちおこし

 このシリーズは、愛媛県内各地の“まちづくり”への取り組みを、中心となる人を切り口として紹介している。今回は、「しまなみ海道」沿線に位置する水軍ロマンの里・宮窪における青年漁業者の取り組みをレポートする。

漁業に対する危機感がきっかけ

 「豊かな海を取り戻したい」「後継者のために行動を起こそう」 そんな思いを抱く宮窪町の青年漁業者らが、1996年6月に「宮窪水産研究会」を発足させ、海の環境保全などに対する取り組みを始めた。現在、同研究会のメンバーは18歳から40歳代までの約30人である。
 同町は越智郡島しょ部でも漁場に恵まれ漁業が特に盛んな地域である。組織づくりのきっかけは、96年3月にバックフィッシュ運動(網に掛かったまだ成魚になっていない小魚を再び海に返す運動)で有名な兵庫県の家島を訪問した際、宿でメンバー7人がじっくり語り合ったことによる。
 藤本二郎(にろう)会長は「だんだん漁獲量が減ってきているが、みんなが寄って腰を据えて話をしたことがなかった。宮窪の漁業を良くするため、腹を割って話し合う場を持とうということになった」とその経緯を語る。
 そして、まずは身近にやれることからということで、操業時に網に掛かった買物用のビニール袋などの海のゴミを回収する活動を始めた。「自分らの研究会の仲間内では徹底できているが、それ以外の漁師にはなかなか行き渡らない。それでも、協力してくれる人も出てきている」と、少しずつ周囲にも活動が理解されつつある。このほか、海の日には地元の中学校とタイアップして海岸清掃をするなど自主的な活動を続けてきた。

 

魚を捕るのはプロだが売るのは素人!

 「宮窪の魚は美味しい」とよく言われるが、浜値は魚種にもよるが20年前よりも概ね2割ほど安く、漁業経営は決して楽ではない。また、地元に市場(いちば)が無く、捕れた魚介類の9割が三原、尾道方面に直接引き取られている。そうした中、約4年前に、会員が集まって話をしている時に、会員の中から「自分らが捕った魚は自分らで売らんか!!」という意見が出た。これが、現在、宮窪漁港で毎月第1日曜日に開催されている「宮窪の漁師市」のルーツである。
 地元で水揚げしたマダイ、チヌをはじめとする新鮮な瀬戸内の幸を、産地直売で漁業者自らが販売する。スタートは朝9時からであるが、僅か30分ほどで売り切れてしまう。地元からだけでなく、今治や福山方面からも新鮮な魚介類を目当てにやって来るファンもいるそうで、大いに賑っている。
 また、さすがに漁師だけあって鮮度へのこだわりは半端ではない。売っている魚は、前日か当日に捕れたもので、活きている魚をできるだけ新鮮なままで販売するため、開始まぎわに生け簀から運んでくる。例えば夏に多く漁獲されるエビはパックに入れて売っているが、パックの中で跳ねている。「エビが活きとる!!」とお客さんは目を丸くする。
 しかし、これまで万事順調であった訳ではない。漁師は魚を捕るのはプロであるが魚を売るのは全くの素人。最初のうちはお客さんとの応対に精一杯で、うっかり値段を間違えて安く売ってしまったこともあるとか。当日までの段取り(魚の手配など)にしても売り方にしてもまさに試行錯誤の連続で、失敗も経験しながら一から消費者直販のノウハウを身に付けてきた。今では、お客さんとの値段交渉などのやりとりも楽しく、売る喜びを感じている。
 このほか同研究会では、特産品の「でべら」(地物のタマガンゾウビラメというヒラメの一種を天日干しにしたもので、炙って食べると酒の肴に最高)の直販などにも取り組んでいる。

会場から見える桜の名所「能島」

会場から見える桜の名所「能島」

 

イベントからまちおこしへ

 PRのため当初より自分たちでチラシを作成し、島内の民宿、コンビニ等、目立った場所に貼ったり、西瀬戸自動車道の大島北IC入口付近に案内看板を設置するなど、少しでも多くの人に来てもらえるよう努力している。更にその活動が広がり、宮窪町役場がそのホームページで町のイベントとして「宮窪の漁師市」を紹介したり、商工会などが「宮窪の漁師市」の運営や港内清掃等に協力を申し出るなど、宮窪水産研究会が投じた一石は確実にまち全体へと広がりをみせている。
 「海の環境を守っていくのは、海からの恵みによって生活している者の当然の義務やろ。次代の後継者が、漁業を続けられるようにこれからも頑張るつもりよ」と自然体を貫く。海の男らしい爽やかで逞しい話振りがとても印象的であった。

(豊嶋 照男)

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