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しまなみ美術館めぐり

広島県瀬戸田町 風に舞う「波の翼」 -瀬戸田町の「島ごと美術館」-(2000年2月) 

2000.02.01 しまなみ美術館めぐり

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 しまなみ美術館めぐりの第2回は、広島県瀬戸田町の「島ごと美術館」を訪れた。瀬戸田は、現代日本画の巨匠・平山郁夫画伯の作品を紹介する「平山郁夫美術館」や国宝級の優れた美術品を展示している潮聲山(ちょうせいざん)耕三寺が特に有名であるが、島全体を舞台にして野外に彫刻を設置するという「島ごと美術館」もユニークで注目を集めている。

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「せとだビエンナーレ」から「島ごと美術館」へ

 「島ごと美術館」のきっかけは、「’89海と島の博覧会・ひろしま」の開催。この時、イベントなど一過性に終わるものだけでなく、後々に残るものを、ということで4つの野外彫刻が制作・展示された。その後、この催しは、「せとだビエンナーレ」として引き継がれ、91年、93年、96年、99年にそれぞれ3つの野外彫刻が作られた。また、99年で「せとだビエンナーレ」は終了し、これら野外彫刻展の名称は「島ごと美術館」と変更された。

 

無限に広がる風景に溶け込む白い三角の帆

 「島ごと美術館」には全部で17点が展示されているが、それぞれ設置場所を生かしたテーマを持っており、ひとつひとつが興味深い。中には猫が輪になって踊っている作品「CATS DANCE」、何が見えるのかちょっと気になる「千里眼」、思わず昼寝でもしたくなる「ねそべり石」などがある。(「ねそべり石」は一対となっている。サンセットビーチにあり、キャンプで飯盒炊飯に利用した猛者もいたらしい。勿論、そんなことをしてはいけません。)
 その中でも、私が特に惹きつけられたのは「波の翼」。現代彫刻家の大家、新宮晋(しんぐうすすむ)氏の代表作の一つである。サンセットビーチから瀬戸田港へ向う道筋の中程、磯辺の小さな岩礁の上に立っている。
 中心に直径30cm程のステンレスの柱が立てられ、その上に組まれた三角形の帆が風を受けて舞う。作者の言葉を借りれば、「白い三角の帆を組み合わせたようなこの作品は、ほんのわずかな風にも反応し、はてしなく変化する。ひらひらと舞うこの幾何学的な形は、岸辺から見ると、海や空、船や島といった無限に広がる風景に溶け込んだ存在になる。」
 訪れたのは北風の強い日だったが、思わず、寒さを忘れるほど、この風に舞う「波の翼」に見入ってしまった。もし、白いさざなみに翼があるとすれば、こういう形になるんだろうなと、「波の翼」というネーミングに納得!

 

台風には泣かされる

 この彫刻の設置場所はまさに絶妙だ。瀬戸田町観光商工課の寺岡さんによると、作者の新宮氏は設置場所を選ぶのに、「他の場所に決めていたが、帰り際、たまたま引き潮になり、海上につきでたこの岩礁を見て変更した」という。この時のことを、新宮氏は、「素晴らしい場所を見つけた。ときには海中に没したり、陸とつながったりする。月の影響を顕著に受け、太陽に焼かれ、強風にさらされる所だ。・・・そして、(白い三角の帆がひらひらと舞う)『波の翼』のイメージが浮かんだ」と記している。
 ただし、磯辺の岩礁の上だけに、常に波・風にさらされ、強風や高波には泣かされる。とりわけ、台風には弱く、全作品の中で最も被害を受けやすい。実際、91年に作られて以来、幾度か被害を受けており、その都度、「作者に報告し、作者の指定する業者が修復している」とのこと。維持管理には、ひとかたならぬ苦労があるようだ。
 「波の翼」は写真よりも実際に見た方がずっと美しい。昼間の「波の翼」もすばらしいが、夕日に映える姿も趣がある。是非、一度ゆっくりと「島ごと美術館」をご堪能していただきたい。

参考文献 : 「せとだBiennaleⅡ」
     せとだビエンナーレ実行委員会発行
(梶原 正秀)

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