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くろーずあっぷしまなみ

愛媛県宮窪町 水軍ロマンの里“みやくぼ” -しまなみ海道’99 愛媛県宮窪町-(99年6月)

1999.06.01 くろーずあっぷしまなみ
▲能島(のしま)

▲能島(のしま)

 

海・島・人・石

9906_map 1934年(昭和9年)3月、雲仙、霧島とともに、我が国最初の国立公園のひとつとして、瀬戸内海が指定された。大小3,000の島々が浮かび、多くの瀬戸(陸地が迫り急流を生じる海峡部)がある絶景は、まさに、”神からの贈りもの”である。
 宮窪町は、「しまなみ海道」の四国側の起点・今治市の東北海上約4kmにあり来島(くるしま)海峡大橋により陸続きとなった、大島の上部を占めている。三方が、瀬戸内海に接し、景観と渾然一体となった姿は、素朴で美しい。
 歴史上、14世紀後半をルーツとする村上水軍の居城跡のある能島(のしま)も大島の沖合い約1kmで近い。水軍の血を継ぐ、進取の気性に富む人々の町である。
 温州ミカンなどの柑橘類、急流に育まれた天然・高級魚、墓石・高級建材向けの大島石(愛媛県庁舎・愛媛県県民文化会館、国会議事堂、赤坂離宮、心斎橋など)で有名である。

多彩なイベント

 開通から10月17日までの170日間に、「しまなみ海道」沿線の関係地域で、総数1千件余りのイベントが予定され、期間中600万人の訪問が見込まれている。
 「愛媛県しまなみ海道’99イベント委員会」、「広島県しまなみ海道’99イベント協会」が全体の運営・管理にあたり、沿線一帯を会場として、連続的に展開する広域連携方式をとっているのが特徴である。イベントには、上記の委員会・協会が主体となるコアイベント、地元を中心とした市町村が進める地域企画イベント、公募した参加者が主体となる自主企画イベントがある。コアイベントは、総数1千件余のうちの約60程度であり、大半は、残り2種類のイベントになる。
 以下、宮窪町に関する直近のイベントを紹介しよう。

(コアイベント) 記念シンポジウム 7月10日
  「海の覇者・村上水軍の栄光」
(基調講演) 軍事史学会理事 ・佐藤 和夫氏
(パネルディスカッション) 歴史復元画家 ・香川元太郎氏
  実証歴史作家 ・森本 繁氏ほか
於・宮窪町石文化伝承館(石文化運動公園内)

(地域企画イベント) 水軍資料展 7月10日~8月29日
  「伊予水軍物語」 於・水軍資料館ほか
(地域企画イベント) 水軍レース大会 7月11日

 “古い歴史と文化を誇る町”に最もふさわしいものに、村上水軍に係る一連のイベントがある。南北朝の内乱時、大島に城を築いて宮方として戦った村上義弘の死後、奥州将軍北畠顕家(あきいえ)の子(親房(ちかふさ)の孫)・村上師清(もろきよ)が跡を継ぎ、因島を支配していた今岡氏を、1377年に攻め、因島を手中にした。その後、師清の3人の息子が水軍として活躍する。3兄弟のうち、長男は能島、次男は来島、三男は因島の棟梁となり、瀬戸内海の島々に砦を築き、“村上3兄弟、三島(さんとう)村上”の時代が続いた。
 記念シンポジウムは、宮窪漁港での水軍レース大会の前日に行われる。1555年の厳島の戦いで、毛利元就を勝利させ、天下取りを目前にした織田信長の水軍を一度は潰滅し、さらに宣教師ルイス・フロイスを、「日本最強の水軍」と畏怖させた“村上水軍”の盛衰、日本史に及ぼした影響などの基調講演・パネルディスカッションを行う。
 水軍資料展では、特産の大島石製の水軍像12体(二科会所属 彫刻家・池田英貴氏ほかが制作)や、歴史復元画家・香川元太郎氏による51枚のイラストを展示する。
 宮窪漁港では、7月11日、水軍レース大会が催される。「小早」と呼ばれる水軍和船(復元船)、約80チームで競争する。日本古来の「櫓を漕ぐ」マリンスポーツは、村上水軍を彷彿させる。

▲水軍レース大会

▲水軍レース大会

 

その他

 毎月第1日曜の朝(9:00~)、宮窪漁港の岸壁では、「漁師市」が催される。地元の若手漁師によって、2年前から続く市で、タイ、チヌ、メバル、カワハギ・・・と、どれも天然ものばかり。今では商工会や農協も参加し、ミカン、てんぷら、ネギ、水軍団子なども並ぶ。必見の市である。(6月6日、7月4日、8月1日・・・・)
 大島には、島内の宮窪町・吉海町にまたがった、「島四国・八十八ケ所」もある。全行程63km、普通2泊3日で札所を巡ることができる。1807年以来の伝統がある。島の人々との“ふれあい”のもと、信仰とレクリエーションを兼ねる島四国巡りも、ますます注目されよう。
 しまなみ海道は、生口(いくち)島(広島県因島市ー瀬戸田町)の6.5km、大島(宮窪町ー吉海町)の6.3kmの2区間については、既存の国道をそのまま利用する暫定開通となっている。
 しかし、できれば徒歩で、自転車で、豊かな歴史と文化の息吹に触れ、ゆったりとした時空に身を置くチャンスではなかろうか。単に素通りするのではなく、大いに寄り道をして、延々と続いてきた島の香りを堪能する、ゆとりを持ちたい。そして、訪問者も、“開放される”豊かさを守り、大切にするマナー、精神を忘れたくないものである。

(菊地 芳博)

(最寄りの問合せ先)
愛媛県 http://www.pref.ehime.jp
宮窪町役場 産業観光課 tel:(0897)86-2500
伊予銀行 宮窪支店 tel:(0897)86-2020

 

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