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くろーずあっぷ東予

今治市 団結の素晴らしさを後世に伝える三継ぎ獅子高部獅子舞と保存会 (97年5月)

1997.05.01 くろーずあっぷ東予

12_01 今治地方には、獅子頭をつけた人が人の肩に乗って舞う「継ぎ獅子(つぎじし)」と呼ばれる獅子舞が伝わっている。この継ぎ獅子は、伊勢神宮の流れを受け、神社の祭礼に奉納される神楽として発達した。この伝統芸能を絶やさず後世に伝えようと保存会を中心とした活動が続けられている。その中から約250年の歴史と伝統を持つ高部獅子舞とその保存会についてご紹介したい。

今治地方独特の三継ぎ獅子

 獅子舞は全国各地に分布し、民族芸能の中で最もポピュラーなものの一つで、太鼓を身につけて一人で一頭を舞うもの、二人またはそれ以上で一頭を舞うものとに大別される。一人立ちのものは東北や関東に多く、愛媛南部にも多数ある。二人立ちのものは、伊勢や熱田方面の御師(おし)と呼ばれた人たちが全国を巡業したことにより、各地に伝えられたとされている。愛媛の獅子舞の大半は、二人立ちで県内全域に分布している。「人の柱」を作ることで人気の高い継ぎ獅子は今治地方独特の演技で、全国的にも珍しい立体芸能である。
 高部獅子舞も伊勢の継ぎ獅子にヒントを得たと言われている。波止浜にあった塩田には、伊勢神宮から御師が「お祓い」のため年に一度定期的に訪問し、神楽を奉納していた。その中に大人の肩の上にもう一人の大人が獅子頭をつけて上がり、剣、扇、鈴をつけて舞う継ぎ獅子があった。現在の伊勢神宮にも「二継ぎ獅子」は残っており、「代々神楽」と呼ばれている。高部厳島神社の大祭に奉納しようと氏子たちによって始められた獅子舞は、代々神楽をそのまま真似することなく、三継ぎ、四継ぎ、五継ぎ、と人柱を高くしていった。今日に至るまでその伝統は親から子へ、子から孫へと代々受け継がれている。

 

晴れ舞台は厳しい練習と努力の集大成

 高部獅子舞保存会は、高部厳島神社に伝わる獅子舞を伝承していく目的で1969年に設立された。60年代初めには若者の減少で、長年続いてきた活動は一時途絶えた。伝統芸能を守り、後世に残し伝えなければという危機意識の高まりから、保存会として復活した。84年には、他の7か所の獅子舞とともに今治市から無形民族文化財に指定された。現在の会員数は37名、全て男性で、高部厳島神社の氏子である今治市高部地区の住民で構成されている。幼稚園児や小学生からお年寄りに至るまで年齢層も幅広い。毎年5月中旬に今治地方の大祭、「春祭り」が執り行われる。その本番を目指して4月の初めから約40日間、厳しい練習が続く。継ぎ獅子は、上へ上へと肩に乗り、最上部で獅子子と呼ばれる子供が獅子の頭をつけて舞う、力とバランスが頼りの荒業である。最も低い三継ぎでも高さは5メートル近くにもなる。四継ぎ、五継ぎをやることもあり、六継ぎを成功させた経験もある。演技には危険を伴うため、参加者にけが等の事故が発生しないよう保存会では特に気を遣う。祭り当日にこの勇壮な継ぎ獅子を見た人たちは、幼い子供たちが難なく獅子子を演じているように感じるだろう。しかしそれは子供と大人が一緒になって厳しい練習を積み重ね、はじめて披露できる努力の集大成なのだ。

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全国に名を轟かせた高部の獅子舞

 高部獅子舞保存会は、結成されてから今年で28年目を迎える。永年の活動が認められ、国民文化祭には過去3回派遣されて大変好評を博した。92年の大晦日のNHK紅白歌合戦への出場は、高部の名を全国に轟かせた。三継ぎ獅子の荒業は、頂点に立つ子供とそれを支える大人たちとの全員の協力がなければ、実現することは不可能である。団結の素晴らしさを全国にアピールし、視聴者に大きな感動を与えた。紅白出場は、会員にとっても高部地区の人たちにとっても大きな誇りであり、心の財産となっている。子供会員10人以上を擁し、他地区を圧倒しているのも強みである。彼らは、次世代の高部獅子舞を担ってくれるに違いない。
 今治地方のみに伝わる三継ぎ獅子の技を保存し伝承していくためには、年間を通じた練習を行なっていかねばならない。同保存会では他の保存会と協力しあって、今治地方祭(5月)と今治みなと祭(10月)の年2回、獅子舞の共演大会を開催している。また、県民文化祭、各種文化祭、博覧会等の主な文化事業に積極的に参加して地域の活性化にも大いに貢献している。
 高部獅子舞の魅力は、何といってもその高さにある。先人たちは「氏神様は天においでになる」という厚い信仰心からその神様に少しでも近づきたいと考え、上へ上へと人柱を伸ばしていったのだろう。しかも「獅子子」を支える氏子同士の協力がうまく出来ないと継ぎ獅子は崩れ去る。自分勝手な行動を戒める意味が込められ、現代社会に対する警告とも受け取れる。厳しい練習を乗り越えた高部の継ぎ獅子。これからも素晴らしい演技を披露してくれるに違いない。

(花本 有輝)

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